身体が喜ぶ「至高の昼ご飯」

改札を出たら目の前の「あじさい坂通り」と名付けられた細い坂道を左手に下っていくと、国道1号線に出る。この辺りでは、国道1号線に「セピア通り」という愛称がつけられているが、通り沿いに骨董品や箱根名物の「箱根細工」など、歴史あるものを扱う店が多いからだという。

「箱根自然薯 山薬(やまぐすり)」へは宮ノ下駅から徒歩10分

国道をしばらく歩いていくと、左手にお城のような建物が見えてくる。明治11(1878)年に創業し、140年近い歴史を刻む有名な「富士屋ホテル」だ。ホテルの先で道が二手に分かれるが、右手の国道138号線の方へ進めば、間もなく「箱根自然薯 山薬(やまぐすり)」という看板と店の建物が見えてくる。

一見、小さな店のようだが、実はこの道路に面した建物は入口に過ぎない。階段を下りていくと、山の中腹に建てられた広いフロアが現れ、窓際の席に座れば、緑豊かな箱根の大自然と、眼下には滝と清流の流れも見ることができる。

同店は、2014年10月にオープンした「自然薯(ジネンジョ ヤマノイモ)料理」の専門店で、伊勢原で栽培されている自然薯を使った「とろろ」を始め、地元の食材をふんだんに使った体に優しい料理を提供している。今回いただいたのは、同店の人気ナンバーワンメニューという「至高の昼ご飯」(税別2,680円)だ。

「至高の昼ご飯」(税別2,680円)で、文字通り、至福のひとときに

自然薯とろろと釜で炊いた麦飯をはじめ、早川漁港で捕れた魚の干物や、地元箱根で有名な相原精肉店の豚肉、さらに、柔らかな食感と甘く香ばしいダシの味付けが絶妙な「自然薯ステーキ」などが付いた、食べ応えのある定食だ。ちなみに、店名の「山薬」とは自然薯の漢方名。自然薯は、様々な栄養素が豊富で、古来、滋養強壮食としても用いられてきたという。

●information
箱根自然薯 山薬
住所: 神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下224
営業時間: 平日10:00~20:30、土休日7:00~20:30
定休日: 不定休

梅雨時の訪問がオススメの箱根湿生花園

さて、ここからはバスで先へ進むことにしよう。富士屋ホテルの前に「ホテル前」というバス停があるので、ここから「仙石・桃源台」方面行きのバスに乗る。15分ほどの「仙石案内所」バス停で下車し、バス停から徒歩で約10分の場所にある「箱根湿生花園」へ行ってみよう。

箱根湿生花園(2017年5月23日撮影)

箱根湿生花園は湿原を始め、川や湖沼などの水湿地に生育している植物を中心にした植物園。6月は仙石原湿原を代表する花であるノハナショウブの他、様々な湿原植物が見頃を迎え、1年で一番美しい時期なのだ。

●information
箱根湿生花園
住所: 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原817番地
開園期間: 3月10日~11月30日
開園時間: 9:00~17:00(最終入園は16:30)
定休日: 開園期間中は無休

新たな温泉旅館もオープン

2017年7月15日、湿生花園のすぐそばに、箱根に温泉旅館をチェーン展開している「一の湯」が、客室全てに露天風呂がついた新たな旅館「ススキの原一の湯」をオープンすることもお伝えしておこう。

「ススキの原一の湯」がもうすぐオープン(写真提供: 一の湯)

同旅館は、湿生花園と仙石原ススキ草原に囲まれた、恵まれた自然環境が魅力のひとつ。新築の建物は、周囲の自然環境と調和するシンプルな「和」をコンセプトとする佇(たたず)まいになっている。また、38部屋の客室は、全室プライベートを重視した露天風呂付客室になっており、風呂からは箱根の外輪山を見渡すことができる。

さて、箱根登山鉄道の「あじさい電車」で行く、梅雨時の箱根路散歩、いかがだっただろうか。箱根の紫陽花は6月中旬頃に箱根湯本駅付近で咲き始め、次第に山の上の方が咲いていき、登山電車の終点の強羅駅の先、ケーブルカーの沿線では7月下旬頃まで、花を楽しめるという。

あじさい号に乗って、紫陽花に会いに行こう(写真提供: 箱根登山鉄道)

このほか、夜のオススメとして、箱根登山鉄道では、6月17日から7月9日まで沿線6カ所で紫陽花の夜間ライトアップを実施するとともに、6月17日から7月2日まで、全席予約指定制の「夜のあじさい号」の臨時運転も行う。箱根は見所が多く広い観光地だが、上手にプランを組み立てれば一日でもかなりの範囲を見てまわれる。また、「箱根フリーパス」という切符を購入すれば、便利でお得に箱根を周遊できるのもオススメだ。

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。