年齢層は上と下、セグメントは1つに絞らず
「最も小さいVWであるup!は、若い人のエントリーカーとしての役割を担うと同時に、ダウンサイザー、つまりは快適性や効率を求めて、大きめのクルマ(上のセグメント)からコンパクトカーに乗り換える人の、品質に対する高いニーズも満たすことができる」。シェア社長の言葉から分かる通り、新型up!が狙うのは、年齢層でいえば上と下の両方ということになる。
では、見た目が軽自動車のようで、実態はコンパクトカーの部類に入るup!は、どちらの市場で勝負するのだろうか。「VWユーザーになっていただけるならば全ての顧客がウェルカムだ」とシェア社長は答えていたが、つまりは1つのセグメントに絞らず、幅広い客層に商品を訴求したいとの考えなのだろう。
up!には3つのグレードがあり、価格設定は158万7000円から193万8000円となっている。この価格帯では、軽自動車およびコンパクトカーとの競合は避けられないし、維持費は軽自動車よりも高くつく。どちらの市場もライバルが多いので、おそらく拡販は一筋縄ではいかないだろう。このサイズ感のクルマを欲しがる人に対し、up!のデザインやVWブランドならではの安全性などが響くかどうかが焦点となる。
up!から始まる顧客との長い付き合い
若い客と年配の客の両方を狙うup!の販売戦略は、顧客との長い付き合いを望むVWの考え方を端的に表している。まずはup!や「ポロ」でVWとの接点を持った顧客が、そのうち「ゴルフ」やミニバンに乗り換え、ダウンサイジングを考えるタイミングで再びup!などの車種に戻る。これがVWにとって理想の流れだ。
この4月はメルセデス・ベンツ「GLA」とアウディ「Q2」の新車発表会にも足を運んだのだが、そこで見たのは、両社が客層の若返りを図ろうとする姿だった。おそらくVWにとっても、ユーザーの若返りは重要なテーマとなっている。up!で若者にアピールし、顧客の人生に早い段階でVWブランドを登場させることが、長期にわたって安定的なビジネスを続ける上では重要な要素となるのだろう。