岩窟の古刹「羅漢寺」でお祈りを

耶馬渓周辺にはパワースポットも点在している。競秀峰から約2kmには荒々しい岩山、羅漢山の中腹にある岩窟の古刹は645年、インドの僧・法道仙人が開いたとされる「羅漢寺」がある。

羅漢寺本堂(画像提供: ツーリズムおおいた)

羅漢寺には歩いて上がることも可能だが、「耶馬渓リフト」を使えば3分で羅漢駅、6分で羅漢山頂に上がることもできる。山門の先には、足利義満により建立されたと伝わる、「無漏窟(むろくつ)」と呼ばれる大きな岩屋がある。ここには国指定重要文化財の五百羅漢石仏のほか、山内では多数の石仏が納められている。岩洞と一体となった本堂など、境内は神秘的な世界観に満ちている。

羅漢寺山門

無漏窟の五百羅漢(画像提供: 洞門ドットコム)

羅漢さまは願いごとを杓文字で救って下さるという。羅漢寺本堂内に入り、悩みごとを捨て、本堂二階・阿弥陀如来の横の半鐘を打つことにより、本来の自分を見つめるという参拝経路もある。その先には、これから桜、つつじ、新緑と見応えのある庭園も広がっている。

山上に羅漢さまが飛び移った!?

だが実は、羅漢寺の近くにはもうひとつ、謎に満ちて神秘的な場所がある。それが「古羅漢(ふるらかん)」だ。古羅漢は羅漢寺が管理するものではないが、古羅漢は羅漢寺の手前で屏風を広げたようにそびえる岩山で、高さは100mほど。遠くからでもその独特なフォルムが目を引く。

古羅漢の全貌

一際高く、要塞のようにも見える最高峰「飛来峰」、その北にふたつの洞穴のある峰「天人橋」、尾根続きに突出する岩峰群「五塔峰」。古羅漢の名は、山上に羅漢さまが並んでいる様相に由来しており、付近の石仏が一夜の内に、この様に飛び移ったという伝説もある。"日本のマチュピチュ"という異名もあるというが、その姿はまるで陸に出現した"軍艦島"のようだ。

ふたつの洞穴のある峰「天人橋」(画像提供: 洞門ドットコム)

古羅漢は怪奇な姿形だけでなく、岩屋には石仏、毘沙門天磨崖仏、断崖に立つ国東塔などが納められている。耶馬渓リフトから約500mのところにある公共駐車場から岩峰へ向けては自然歩道があり、岩屋へ上がっていくことも可能だが、道は険しいので上がる場合は十分注意してほしい。

根続きに突出する岩峰群「五塔峰」は眺めるだけでなく、実際に上がっていくことができる(画像提供: 洞門ドットコム)

耶馬渓は、深耶馬渓の「一目八景」、奥耶馬渓の「猿飛千壺峡」など絶景の宝庫だが、中津に行く際はこのユニークな景観を眺めてほしい。

深耶馬渓の景勝地「一目八景」(画像提供: ツーリズムおおいた)

中津グルメは唐揚げだけじゃない!

もちろん、中津の魅力は景勝地だけではない。温泉では青の洞門から約6km、古くは山岳仏教の信仰を集めた修験の山「八面山」の麓にある金色温泉の一軒宿「こがね山荘」など7つの温泉宿のほか、市内11カ所に立ち寄り湯がある。

「八面山金色温泉」には男女計9つの露天風呂が点在。自然美と湯巡りが楽しめる(画像提供: ツーリズムおおいた)

さて中津と言えば、からあげグランプリ6年連続最高金賞受賞の「ぶんごや本店」など、ご当地グルメの中津からあげ(中津市HPにマップあり)が有名だが、中津に来たらぜひ味わいたいのが鱧料理だ。

「はも家割烹 瑠璃京」の鱧御膳(税込3,240円、写真は鱧シュウマイ)。中津からあげも別注できる

鱧というと高級で淡白というイメージがあり、がっつりいきたい若い男性には物足りない印象もあるかと思うが、中津市内には絶品の鱧のしゃぶしゃぶや名物の鱧シュウマイなどを手頃な値段で提供してくれる割烹や居酒屋が多数ある。「はも家割烹 瑠璃京」では地元豊前海で育ったの鱧を使った9品の鱧料理とデザートがついた鱧御膳(税込3,240円)を提供しており、気軽に鱧尽くし料理が楽しめる。

鱧御膳では鱧しゃぶしゃぶも楽しめる

これから新緑が美しい季節、絶景のパワースポットと温泉、グルメが充実した中津に出かけてみてはどうだろうか。歴史好きには中津城や城下町や寺町歩きもオススメだ。

筆者プロフィール: 水津陽子

フォーティR&C代表、経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。著書に『日本人がだけが知らないニッポンの観光地』(日経BP社)等がある。