高知県の仁淀川は、2012年放映のNHKスペシャルで「仁淀川 青の神秘」と紹介され、"仁淀ブルー(商標登録)"の名で一躍有名になった清流。水質は国交省の「全国1級河川の水質ランキング」で、2012年度から3年連続で第1位に選ばれている。

国内トップレベルの水質を誇る仁淀川は、神秘なるブルーで人々を魅了する(画像提供: 仁淀ブルー観光協議会)

透明度が高く、河原では桂浜の五色石のもとになる色とりどりの美しい石に埋め尽くされた川底は透けて見える。その神秘の青に多くの人が魅了され、写真家やアーティスト等のファンも多い。流域には中津渓谷など、知られざる絶景やグルメが点在している。そこで今回、この仁淀流域の魅力と楽しみ方をたっぷり紹介しよう。

流域6市町村が連携した「日本版DMO」

まず、仁淀川とはどんな川かを押さえておこう。愛媛県にある標高1,982mの石鎚山を源とし、愛媛から高知へ7市町村を経由し太平洋へと注ぐ清流は延長124km、四万十川、吉野川と並び四国三大河川のひとつに数えられる。ちなみに愛媛県では面河川と呼ばれている。高知県では中西部に位置する仁淀川町など流域6市町村を流れる。

2010年11月に流域の6市町村が一体となって、地域の魅力発信や旅行商品の企画造成により交流人口の拡大を図る目的で「仁淀川地域観光協議会」を設立した。これは、仁淀川流域の自治体がいずれも規模が小さく、個々では十分な情報発信や誘客活動ができないため。仁淀川上流は道路が狭く、観光客数の情報管理を一元化し、調整混雑を避ける必要があった。

雨と渓谷の流れで造られた自然のオブジェ「中津渓谷」。「もみじ滝」や「竜宮淵」など千差万別の奇観が連なる類まれな渓谷美を誇る谷には、約2.3kmにおよぶ遊歩道が整備されている

この連携は、広域での旅行商品の企画や誘客、旅行者の動向や満足度調査等のマーケティング、リピーターを増やす戦略、仁淀ブルーの商標登録やブランド化にもつながっている。2014年流域の主要観光施設の観光入込客数は前年の14万人から21.6万人へ、協議会関連のツアー客数は前年の730人から4,153人へ増加した。

2015年12月協議会はさらなる飛躍を目指し法人化、「仁淀ブルー観光協議会」と名を変えた。現在、国の地方創生が推進する観光地域づくりのかじ取り役「日本版DMO」設立の準備を進めている。

渓谷でおいしい空気を胸いっぱい吸い込む

約2.3kmの渓谷散歩は絶景ばかり

仁淀川支流の中津川流域にある「中津渓谷」は、県立自然公園にも指定されている景勝地で、四国の水辺八十八カ所にも選ばれた美しい渓谷だ。中津明神山に降る雨が長い時間をかけて造りあげた水の森には、「もみじ滝」や「雨竜の滝」「竜宮淵」「石柱」など見どころも多い。入り口から石柱までの約2.3kmには遊歩道が整備されており、渓谷美を間近に見ながら散策を楽しめる。

遊歩道の奥に進むと、中津渓谷のシンボル「雨竜の滝」が待っている

渓谷でまず目を惹くのは、入り口にある巨岩の下の祠に立つ毘沙門天像の姿だ。中津渓谷には中津龍神七福神が祀られており、散策しながら七福神の石像を見つけるのも楽しみのひとつとなっている。そこから奥に進むと渓谷には赤褐色の巨石が多くなり、その赤に透明度の高い中津川の青碧の水色が重なると、得も言われぬ神秘的な景観となって見る人を引き込む。

きっと誰もが神秘的なブルーに魅せられる(画像提供: 仁淀ブルー観光協議会)

入り口から20分ほど歩くと、中津渓谷のシンボル「雨竜の滝」がある。落差約20mの豪快な滝は、竜が水を吐くように見えることから「竜吐水」とも呼ばれる。遊歩道がなかった時代はここまで近づくことは容易ではなく、神秘の滝として崇められていたが、今はその迫力のある姿を間近で見ることができるようになった。雨竜の滝の上には「竜宮淵」、遊歩道最奥に進めば、自然が創り出した約20mの石柱とさらなる絶景が待っている。

渓谷散策では七福神巡りも楽しめる

なお、雨の後など足元が滑りやすい場所もある。行かれる際はぜひ、時間に余裕を持ち、足元に注意して楽しんでほしい。