世界三大花木「ジャカランダ」の日本三大名所

6月の熱海温泉では、熱帯植物「ジャカランダ」が見頃を迎える。日本ではあまり馴染みがないが、"世界三大花木"に数えられ、紫色の見事な花を咲かせる木だ。熱海温泉以外では、長崎県の小浜温泉と宮崎県の日南海岸が有名で、"日本三大ジャカランダ名所"だと言える。

熱海温泉のジャカランダ街路樹。満開時には木全体に紫色の花の房が咲き誇る

ジャカランダは非常に気まぐれな花で、桜のように毎年必ず満開になるわけではない。その年の気候によって、花芽がたくさんできる木もあれば、全然咲かない木もある。しかも、見頃が梅雨時なので曇天が多く、青空下で咲き誇るジャカランダを見るのはなかなか難しいのも事実。しかし、それだけ貴重だからこそ、一度は見たいと思わせてくれる。

熱海温泉では、海沿いの街路樹の大半がジャカランダになっている他、観光名所「お宮の松」の両側(お宮緑地)が、近年「ジャカランダ遊歩道」として整備された。一部に苗木のようなサイズの木もあるが、今後の成長が非常に楽しみだ。

糸川を覆い尽くすように咲くブーゲンビリア。川の両側の護岸には黄色い花も咲く

6月にはブーゲンビリア(ブーゲンビレア)も見頃を迎えるので、同時に楽しめる。場所は、春に寒桜「あたみ桜」の並木道になった、市内中心部を流れる糸川の中だ。川の両岸から針金が網状に張られており、その上を色鮮やかに彩るブーゲンビリアは、まさに絶景だ。

日本一遅い紅葉名所が絶景過ぎる

日本一遅い紅葉名所と呼ばれる「熱海梅園 もみじまつり」の紅葉は、12月上旬が最盛期。春の梅の方が有名だが、実は紅葉も負けず劣らず絶景で、熱海もみじ園と改名すべきと思ってしまうほどだ。熱海温泉の紅葉時期は、修善寺温泉と同時期なので、周遊してもみじ狩りを楽しめる。

色とりどりの紅葉が美しい熱海梅園。6月前半には、まさにこの場所でホタルも鑑賞できる

実は熱海梅園では、6月前半に「ほたる観賞の夕べ」が開催されるが、最も多くホタルが出現する場所が、まさに写真の場所だ。季節に応じて梅だけでなく、ホタルも紅葉も楽しめる熱海梅園の底力に驚かされるが、一年中各種の花を楽しめる、温暖な熱海温泉の魅力が凝縮された公園だ。

●information
熱海梅園もみじまつり
住所: 静岡県熱海市梅園町8-11
アクセス: JR東海道線来宮駅下車徒歩約10分。またはJR熱海駅から相の原団地行きバス約15分、梅園下車すぐ

古き良き熱海温泉の風情を日帰りで

もちろん、熱海温泉に来たのであれば温泉はマストだろう。熱海温泉の古き良き風情を今に伝えているのが「福島屋旅館」だ。旅館という名前だが、税込400円という銭湯並みの料金で気軽に日帰り入浴可能で、しかも石鹸・シャンプー・リンス完備なのだから、本当にありがたい。

裸電球で照らされた脱衣場は、まさに昭和の香り漂う風情で、レトロ好きにはたまらない魅力だ。マイルドながら「水道水とは全く異なる」と実感させてくれる温泉泉質も抜群。熱海代表をする源泉「熱海七湯」の「風呂の湯」があった由緒正しい場所にあり、宿の右隣には今も石碑が残っている。駐車場がないので車では立ち寄りにくいが、有料駐車場に停めて歩いてでも行きたい、温泉好きにオススメの宿だ。

福島屋旅館の男湯。レトロな雰囲気の中で熱海温泉の名湯を堪能できる

●information
熱海温泉 福島屋旅館
住所: 静岡県熱海市銀座町14-24
アクセス: JR東海道線熱海駅から徒歩約10分

梅や桜が咲き競い、春を先取りできる温暖な熱海温泉の魅力、いかがだっただろうか。今回紹介したように、年間を通じてさまざまな花を楽しめる熱海温泉は、一年中何度でも訪れる価値がある、断然オススメの温泉地だ。

この他、春には熱海城の桜が見頃を迎え、花火大会も一年中開催されており、2017年度は18回実施される予定だ。熱海温泉の魅力は単にアクセスの容易性だけでなく、年中イベントが目白押しの、通年お祭り気分で盛り上がれる点にあると言えるだろう。

筆者プロフィール: 藤田聡

温泉研究家、オールアバウト「温泉」「紅葉スポット」ガイド。温泉旅行検定試験で2年連続日本一になり、検定協会から「温泉旅行博士」の称号を授与される。温泉地を中心に周辺観光地の取材・撮影を行い、海外旅行にも決して負けない、国内旅行の奥深い魅力をメディアで発信中。紅葉や一本桜、夜景や四季の花などの絶景スポットにも精通している。