日本車メーカーにとって、米国を中心とする北米は、かつての輸出主体から現地化推進の流れにシフトしているとしても、グローバル戦略の要であることに変わりはない。

トヨタは投資計画を発表

世界販売で独フォルクスワーゲン(VW)と首位争いにしのぎを削り、VWと共にいまや世界のビッグ2であるトヨタにとっても、北米戦略は重要な位置づけとなっている。北米はトヨタの世界販売の3割を占め、利益面でも営業利益の4割を占めるグローバル戦略の稼ぎ頭だ。

そんななか、トランプ大統領がメキシコ工場建設の件でトヨタに名指しで難くせをつけたことは話題となった。豊田章男社長は「デトロイトショー2017」における発表で、「米国で今後5年間に100億ドル(約1兆1700億円)を投資する計画」であることを明らかにして対応。一方でメキシコ新工場は「米国の雇用を減らすものでなく、計画は続行する」ことも表明した。

むしろ、トヨタとしては大型SUVの需要シフトに遅れていたこともあり、その後はペンス副大統領の地元であるインディアナ工場での大型SUV、ピックアップトラックの増産投資と雇用増大を表明している。加えてデトロイトショーでは、新たな設計・開発手法の「TNGA」でプラットフォームとエンジンを一新した新型「カムリ」を発表。2017年夏からケンタッキー工場で増産し、かつての全米ベストセラーカー復活を目指して米国販売での巻き返しを期すことにしている。

新型カムリ(画像はトヨタ自動車より)

日産とホンダの事情は

日産は、米国で需要シフトが鮮明なSUVセグメントに新型「アルマーダ」、「ローグ」などを持つ。販売は好調に推移しており、昨年を上回る計画を示している。ただ日産は、日本車の中でいち早くメキシコに生産進出した企業であり、メキシコを北米生産基地としているため、トランプ大統領による北米自由貿易協定(NAFTA)見直しへの動きは気になるところである。

ホンダは元々、日本車のなかで先行して米国オハイオに生産進出した歴史がある。かつては「ホンダの米国一本足打法」と揶揄されたほど、米国の生産、販売、利益面における寄与率が高かった。

ここ最近は一時ほどの北米依存度ではなくなっているものの、米国のほかカナダとメキシコにも生産拠点があり、2016年の米国販売ではピックアップトラックや大型SUVで堅調な販売を示している。復活した新型「NSX」は、米国で開発・生産して世界市場に供給する体制をとったほどだ。ホンダにとって米国は、開発、生産、販売の全てでグローバル重要拠点の位置づけを強めている。