「受験戦争」という言葉があるように、合格を勝ちとるために勉強に励む子どもたち。中には、小学校入学をかけて受験をしている子どももいる。多くの場合、両親が子どもの将来を考えていい教育を受けさせたいという思いから受験させているのだろうが、外国人の目には、それがどのように映っているのだろうか。母国の小学校入学事情を含めて、日本在住の外国人20人に聞いてみた。

母国にも小学校から「受験戦争」はある?

厳しすぎる

・「小学校から教育が厳しいイメージがします。ブラジルでは小学校の3~4年までは遊びの感じで普通に教育を受けますが、それ以降は放課後数時間の勉強も必要な科目が入ります」(ブラジル/20代後半/男性)

・「場合によっては、子どもにちょっとプレッシャーをかけすぎているようなこともあると思います。ウクライナでは日本ほどの競争はないように思います」(ウクライナ/30代前半/男性)

・「日本は厳しい、ベトナムは優しい」(ベトナム/20代後半/男性)

・「クレイジーですね。タイでは入れるだけでもありがたいです」(タイ/30代前半/男性)

・「小学校から受験戦争に巻き込みたくはない。かわいそう。韓国は小学校から受験させるのはごくまれです」(韓国/20代前半/男性)

・「ありえないと思います。高校までそういうプレッシャーやエリートをつくっても意味ないと思います。フランスはプライベートスクール(私立校)はありますが、受験はないです」(フランス/30代前半/男性)

・「一般の日本の小学校に受験がないと思っていました。あれば、日本人の子どもたちはとても大変だと思います。幼い頃から学校に入るのが難しくて。スペインでは小学校受験はありません」(スペイン/30代前半/女性)

・「日本の受験システムは厳しすぎます。小学校から受験なんてやり過ぎだと思います。ルーマニアは小学校受験がありません。子どもを一番近くの小学校に登録するだけでいいというシステムです」(ルーマニア/30代前半/女性)

・「子どもたちがかわいそうで、全然必要がないと思う。台湾でも私立の小学校に入る場合は受験を受けるけど、みんな大体子どもたちを公立の学校に行かせる。小学校で教育を受ける一方、できるだけ子どもたちに遊ばせるといい」(台湾/20代後半/女性)

受験はあった方がいい・当たり前

・「受験があった方がいいと思います。モンゴルの生徒たちもよく受験勉強しています」(モンゴル/30代前半/男性)

・「日本の事情はよく知らないですが、ロシアでもハイランキングの小学校には受験があります。自分が通った学校も同じでした。違和感がないです」(ロシア/20代半ば/女性)

・「個人の自由なので、英才教育で私立に行きたいなら、受験は当たり前と思います。中国も同じですが、最近人気な公立学校もさまざまな試験があります。結局、一人っ子政策の結果だと思っています」(中国/30代半ば/男性)

・「香港も小学校受験があります。日本とあまり変わりません」(香港/20代後半/女性)

日本は教育熱心と思う

・「すごいと思います。インドネシアでも目指している学校に入れるように受験している子どもがたくさんいます」(インドネシア/40代前半/女性)

・「日本は教育熱心ですね。フィリピンではよっぽど一流学校ではないと小学校受験はないと思います」(フィリピン/40代前半/女性)

競争に固執しないようにするのは親の役目

・「若い内から『競争』を意識させるのは大切だとは思いますが、競争に固執しないように教えるのは親の役目だと思います。小学校受験はパラグアイにはないです」(パラグアイ/30代前半/女性)

特に何とも思わない

・「特にどうも思いません。インドには小学校受験はありません」(インド/40代前半/男性)

受験ではないところで日本と違いあり

・「ハンガリーには、幼稚園の先生が『この子、まだ学校に行かない方がいい』と言うなら、さまざまな先生とも相談した上で、1年間遅れて小学生になることもありえます。必ずみんなが同じ時に小学生になるわけではないです」(ハンガリー/30代前半/女性)

・「イタリアでは、授業はほとんど午前中しか行われなかったです。日本は行事が多いので、より集団生活を感じられると思います」(イタリア/30代前半/男性)

・「受験についてではないですが、日本の小学生たちが自分で自分の学校を掃除する点は素晴らしいと思います。アメリカにはないです。そうした方が、ちゃんと汚さないように努力するでしょう」(アメリカ/30代前半/女性)

総評

今回のアンケートでは、20人中9人が小学校受験は「厳しい」「かわいそう」という回答だった。その多くは、「プレッシャーをかけすぎる」といった内容だったが、「タイでは入れるだけでもありがたい」という言葉に、日本がいかに恵まれた国であるかをあらためて思い知らされた気がした。正反対の「受験はあった方がいい」という回答では、受験が勉強する機会になっているという考えもあるようだ。

また、母国に小学校受験はないが「『競争』を意識させるのは大切だが、競争に固執しないように教えるのは親の役目」というパラグアイの方の回答は、実に当を得ているのではないだろうか。本質はその先に何を学ぶかであって、それを幼い子どもたちに理解できるように教えられれば、受験は単なる「厳しい」ものではなくなるかもしれない。

そのほか、受験とは関係ないが、ハンガリーの小学校事情の「必ずみんなが同じ時に小学生になることじゃない」は、なかなか面白い。年齢に合わせての進学を当たり前のように思っていたが、それぞれの子どもを見極め、あえて1年待って小学校へ進ませるというのは、これまで聞いたことのない発想だと思う。いずれにしても、親の期待や常識だけでなく、その子どもをしっかり見ての教育が大切なのだろう。

調査時期: 2016年7月16日~2016年8月15日
調査対象: 日本在住の外国人
調査数: 20人
調査方法: インターネット応募式アンケート

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