膠芽(こうが)腫の頭部MRI。▲部分が腫瘍(高島平中央総合病院提供)

脳は私たちの思考や行動を司る唯一無二の存在である。その代表的な疾患で患者数や死亡例が多いのが脳出血脳梗塞をはじめとする脳卒中だ。一方で、罹患(りかん)する割合こそ少ないものの、脳腫瘍も私たちを死へと誘う重篤な疾病として忘れてはならない。

ただ、一口に脳腫瘍と言ってもその種類は多岐にわたり、どの脳腫瘍に罹患したかで予後も全く変わってくる。今回は高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師に、脳腫瘍の種類とそれぞれの特徴に関して話を聞いた。

原発性と転移性の違い

脳腫瘍は脳に発生する腫瘍(身体の一部の組織や細胞が病的に増殖したもの)の総称で、良性と悪性の2種類がある。良性は細胞の増殖スピードが遅く、悪性は速い。もちろん、私たちを死に至らしめるのは後者だ。

一般的にがんが「ステージ」という言葉を用いてその進行具合を表現するのに対し、脳腫瘍は「グレード」という言葉を使用する。WHOが定めるグレードはI~IVの4段階で、IVが最も重度の腫瘍を意味する。そして、「何が原因で腫瘍が発生したか」という観点に基づくことで脳腫瘍は以下の2つに大別できる。

原発性脳腫瘍……脳を構成している組織が腫瘍化したタイプ。

転移性脳腫瘍……脳以外の部位でできた腫瘍が転移してきたタイプ。脳と場所が近く、患者数も多い肺から腫瘍が転移してきたパターン(※国立がん研究センターの「2015年のがん罹患数、死亡数予測」によると、2015年の予測肺がん罹患数は13万3,500人)がポピュラーとなる。

この2種類のうち、原発性脳腫瘍はさらに細分化できる。福島医師にその中から代表的な4つを解説してもらったので次ページ以降に詳細をまとめた。