KDDIの導入事例からみる「勤務間インターバル制度」

日本国内における勤務間インターバル制度の現状は、「認知度は高まっているが、一般労働者には広まっていない」(柴田書記長)段階だ。導入企業としては、auブランドを展開する電気通信事業大手のKDDIなどが有名だろう。

同社は国際電信電話(旧KDD)時代に、「交代勤務の社員は勤務終了から次の勤務開始まで7時間以上空けるルール」を制度化するなど、現在の勤務間インターバル制度の前身となる制度を導入。2012年10月には裁量労働制の導入と合わせて、裁量労働者に「8時間以上」のインターバルを設けるよう定めた。

現在は2015年の春闘交渉に基づき、就業規則に「8時間以上のインターバル」を定め、安全衛生規定には健康管理上の指標として「11時間のインターバル」を設定している。

KDDIの勤務間インターバル制度について(勉強会資料より)

柴田書記長の報告によると、同社が勤務間インターバル制度を導入するに当たって、組合員からも反発があったそうだ。

柴田書記長「2015年の春闘では、組合員からも『業務が回らなくなる』『お客様に迷惑がかかる』『他部門との連係に支障を来す』等々の反論が寄せられた。しかし、36協定の遵守や残業時間縮小のための職場巡回などの対処は『長時間労働を前提とする対処』にすぎず、労働者自身に休息時間の確保の重要性に対する意識が芽生えない。勤務間インターバル制度の導入には、意識の転換が必要だった」

そこでKDDI労組執行部は、労使合意に向けてシミュレーションを実施。稼働日全体の95%は11時間のインターバルがとれていることを確認した。残りの5%については、業務上の緊急性や職場の混乱を回避するため、適用除外ルールを設けることを定めた。

勤務間インターバル制度の効果と課題とは

導入に対し大きな支障がないことを確認した上で、労使合意に至った同社。導入後の効果としては、「確実な休息時間の確保が可能になった」「全社員の休息時間の把握が可能となった」「組合員の意識改革につながった」という声があがったそうだ。

また、今後の課題としては、「制度趣旨や内容の継続的な周知展開と理解促進」「年次有給休暇の取得向上」「勤務間インターバルの確保困難な状況への対応」などが浮上している。同社労組では引き続き、「休息時間の確保」を前提にした改善を進めるという。

導入後の効果と課題(勉強会資料より)