厚生労働省は5月16日、報告書「過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業」を発表した。それによると、2014年度に1カ月の残業が最も長かった正社員の残業時間が、過労死ラインとされる「月80時間」を超えた企業は22.7%に上った。

男女別・年代別にみた週労働時間 60 時間以上の雇用者の割合(2014年)(出典:厚生労働省Webサイト)

過労死等防止対策推進法、企業の6割が内容把握せず

総務省の「労働力調査(2014年)」によると、週労働時間が60時間以上の雇用者の割合を男女別・年齢別にみた場合、30代後半男性と40代男性は17%前後に上っている。

今回の企業アンケートで、2014年度において1カ月間の残業が最も長かった正社員の残業時間を調べたところ、「80時間超100時間以下」が10.8%、「100時間超」が11.9%となり、過労死ラインの月80時間を超えた企業は計22.7%に上った。このほか、「10時間以下」は16.5%、「30時間超45時間以下」は15.3%、「60時間超80時間以下」は13.3%となった。

業種別にみると、月80時間を超えた割合が最も多かったのは「情報通信業」で44.4%、以下、「学術研究、専門・技術サービス業」が40.5%、「運輸業、郵便業」が38.4%、「複合サービス事業」が34.1%、「建設業」が30.8%と続いた。

従業員の規模別では、「1,000人以上」で月80時間を超えた割合が56.9%となり、次いで「500人以上1,000人未満」が37.7%、「300人以上500人未満」が36.9%となった。

残業が必要となる理由を聞くと、「顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要がある」が44.5%でトップ。以下、「業務量が多い」が43.3%、「仕事の繁閑の差が大きい」が39.6%と続いた。

過労死等防止対策推進法の認知度については、「大まかな内容を知っていた」企業は38.1%。一方、「名前は知っていた」は42.1%、「知らなかった」は17.6%と、内容を把握していない企業は約6割に上った。

また、労働者に残業を行う場合の手続きを尋ねたところ、半数近い46.6%が「本人の意思や所属長の指示に関わらず残業が恒常的にある」と答えた。 

同省は「過労死が多く発生しているとの指摘がある職種や業種について、今年度はより深堀りした調査を実施していきたい」と話している。

企業アンケートの調査期間は2015年12月21日~2016年1月29日、有効回答は1,743社。労働者アンケートの調査期間は2015年12月19日~2016年1月6日、有効回答は18~64歳の個人1万9,583人(公務員、外国公務従事者は除く)。