欧州勢を筆頭にEVシフトが鮮明

FCVに関しては、安倍政権の水素社会到来に向けての国策もバックにあるが、グローバル戦略として、トヨタは独BMWと技術提携関係にある。他社の動きとしては、ホンダがGMと技術提携しており、日産ルノー連合もダイムラーおよびフォードと技術提携関係にあるといったように、FCVの今後に向け、日米欧のメーカー間協力は多様化している。

一方で、欧州勢がこのところEV戦略を強めてきている。特に独フォルクスワーゲン(VW)がディーゼル排ガス不正問題以降、一気にEV戦略を鮮明にしているのだ。ダイムラーもEV新ブランド「EQ」を立ち上げるなど意欲的な動きが目立つ。米国も然りで、GMはEV「ボルト」の航続距離を383キロメートルに延ばし、テスラ「モデル3」の346キロメートルを上回ってくるなど本腰を入れてきている。

「リーフ」発売以来、EVで世界をリードすると豪語していたゴーン日産は、このところテスラの台頭に対し伸び悩んでいた。しかし、EV開発で実績のある三菱自を傘下とし、オール日産連合でEV戦略の巻き返しを図ろうとしている。

矢継ぎ早に新たな手を打つ豊田社長

こうした中で、トヨタはエコカー全方位戦略をとっていたものの、EV開発では出遅れており、一気に遅れを取り戻すための策を模索し始めた。それが、デンソーなど主力サプライヤーも巻き込んだ社内ベンチャーの発足だったのだろう。トヨタは奥田体制時代、社内ベンチャー企業「VVC」を発足させたことがある。当時も「トヨタには社内変革が必要だ」(当時の奥田社長)との観点によるものだった。

トヨタは豊田章男社長が就任して8年目を迎えている。グローバル1,000万台体制となり世界覇権を競う中で、カンパニー制度の導入やダイハツの完全子会社化、スズキとの提携、AI(人工知能)の米国子会社設立など、矢継ぎ早に新たな手を打ってきている。

FCVにしてもEVにしても、トヨタはマツダや富士重工業(スバル)、さらにはスズキとも連携していき、かつグループの主力サプライヤーとの一体感醸成とスピードアップを図っていく考えなのだろう。