致死率が高いくも膜下出血だけに、危険因子を避けて発病を未然に防ぐことが他の疾患以上に重要となる。確固たるエビデンスがある、くも膜下出血の主要なリスクファクターは「血圧」「たばこ」「お酒」の3つ。

「この3つの中で動脈瘤を増大させる因子としては、たばこと血圧が挙げられます。くも膜下出血と動脈瘤の2つに共通しているのは、『血圧コントロールしましょう』ということです」。

血圧コントロールの点から鑑みると、特に注意したいのが食生活だ。過度の塩分摂取はご法度だし、過剰飲酒は出血の危険因子として知られているため、1週間のアルコール摂取量は150g未満に抑えるようにしたい。

ちなみに、公益社団法人アルコール健康医学協会によると、20gのアルコール量の目安は「ビール(アルコール度数5度)中びん1本(500ml)」「日本酒(アルコール度数15度)1合(180ml)」など。150g未満となると、ビールなら1週間で飲める量は中びん7本までという計算になる。ただ体格や体調など個人差があるので、「この量までなら誰でも飲酒して大丈夫」ということではない。

血圧とたばこ、飲酒の3つの相対的危険度もそれぞれわかっており、最もくも膜下出血を招くリスクが高いのは飲酒だ。飲酒をしない人のくも膜下出血の罹患しやすさを「1」とすると、飲酒をするとその危険度は「4.2」になる。同様の考え方を他の2つの因子に当てはめると血圧が「2.8」、たばこが「1.9」となる。それだけに、特にアルコール量の調整には気をつけたいところだ。

やせ型は発症しやすい?

その他で気をつけたいのが「家族発生」と「肥満度との関連性」だ。

前者では、1親等以内にくも膜下出血の既往歴があったり、動脈瘤を指摘された人がいたりしたら注意が必要だ。特に女性は「女性系列は家族内発生が多い」とされているので、気になるようなら脳ドックで調べたほうがよい。

また、肥満度とくも膜下出血の発症リスクには負の相関がある点にも留意したい。すなわち、いわゆる「メタボ体形」の人ではなく、やせ型の人によく発症がみられるということだ。「やせ気味のヘビースモーカー」や「やせ型の酒豪」といった特徴が当てはまる人は、日ごろから注意しておいたほうがよいだろう。

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記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)

日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。