イー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをりさん

日本航空はこのほど、「JALなでしこラボ」の2期生キックオフイベントを開催した。イベントの後半では、働く女性たちの知恵を活かした市場創造型コンサルティングを展開する、イー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをりさんが登壇した。佐々木さんは過去にテレビ朝日「ニュースステーション」などのレポーター を務めたほか、2007年には「JALプロジェクト@イー・ウーマン」プロジェクトで日本航空への提案を実現するなどの経験を持つ。今回は「ダイバーシティの時代に輝くために」というテーマで行われた講演の内容についてレポートしていく。

そもそもダイバーシティって何?

志やビジョンは同じ方向を目指す中で、いろいろな人が支える会社あるいは地域であると、健全で強固なのではないか、というのがダイバーシティの考え方です。性別や年齢のほか、学歴、社歴、職歴、言語、LGBTといった様々な違いのある人たちがそれぞれの視点をもってきてくれると、良い組織ができるのではないかと思います。

また、ダイバーシティというのは、ただいろいろな人がいればいいのではなく、考え方を含み入れる(include)ことが重要。これは、議論の途中においても、発信するときも大事になります。経営を強化して、継続的に成長するために必要です。

"視点のダイバーシティ"が組織の総合得点を高める

ダイバーシティの目的は、チームの総合得点を高めること。そのために、組織の全員が力を合わせて、おのおのの個性や考えを活かすことが必要です。そこで、一番大切なことは、"視点のダイバーシティ"。つまり、組織の視点が多様になるということです。全員が"これはこうだ"と思い込んでしまっている集団では、成長しません。

例えば、年齢や入社年度、出身大学のレベル、家庭環境が似たような10名の男性が、頭を突き合わせたときに、100通りのアイデアが出るのか。そこに、女性が3名入ったら、議論がもう少し活発になるのではないかという考え方です。これが、硬直した日本企業に女性を採用した方がいいのではないか、と言われている理由なんです。

極論を言えば、その似たような10人で1人が10通りのアイデアを出せて、ものすごく自由闊達にいろいろな方面からチェックできるのなら、いいのかもしれません。また、女性が3名参加しても「何もないです」と言っているのでは、意味がありません。つまり、多様な人がいて、自由に議論をしている"視点のダイバーシティ"が必要です。

ダイバーシティを履き違えて捉えると、例えば、「15時に帰りたい」「私は音楽を聴きながら仕事したい」「在宅で働きたい」「スーツを着たくない」と、好き勝手に意見や要望を言うのでは、単なるわがままになってしまいます。つまり、会社の利益につながるのかという点が重要なポイントです。

ダイバーシティで、"機能できる"人材になるには

では、ダイバーシティに対応していくために、どのように向き合えばいいのでしょうか。経営側は、企業の人事制度や評価を改善することが必要です。例えば、一括採用の枠を減らす代わりに、中途採用の枠を増やし、様々な人材をとってみる。また、時間報酬制で時間に比例して報酬が支払われる組織ではなく、成果主義に変えてみるなどの工夫をすることです。このほか、社内イベントなどで外部講師を呼ぶ際、女性の講演者を会社に呼ぶなど、社内が活性化する組織づくりに改善していくのも手です。

一方、ダイバーシティ時代に輝くため、働き手に求められるのは、貢献することだと思います。そもそも「work」は、機能する・役に立つ・周囲に貢献するという意味です。働くということは、ただ時間に行って言われたことを、やるのではなく、前進・提案・改善・成果を生むことです。

今日会社は、あなたが来たことによって何センチ前に進みましたか、あなたのいた足跡がちゃんと残りましたか。チームの総合得点を上げるために、あなたはきちんと働きましたか。これが「work」ということになります。

一人一人が「work」するためには、「I statement」(私のことに限定して話す)という考え方が必要です。例えば、「私は~だと思う」「私だったら~をする」「私は~をしたことがある」「私は~となったらいいと思う」という言い回しで、会議での発言をします。これが、ダイバーシティである自分をつくる研修の1つだと思ってください。

日本語という言語はあやふやで、「私」という単語を言わなくても文章が成り立ちます。例えば「それ、いいね」「いらないんじゃない」など、"誰が"言っているのかが、よくわからない。なので、「I statement」を会議室で議論をするときに使っていただいても結構ですし、上級になるとお客様との会話で使っていただいても良いと思います。

ダイバーシティで役立つ会議の仕方は?

では、実際の会議で「I statement」のやり方で進める方法について説明していきます。仮に、社内で「オフィスの壁が灰色で暗い気分になってしまうので変更したい」という意見が出て、壁を何色に変えるのが良いかが議題になったとします。「私は黄色がいいと思います」「私は青がいいです」と、のっかれば多様な意見を引き出すことができるわけです。

このとき、相手の批判はしないでください。根拠となるデータがある場合なら良いですが、「最近はみんな青だよ」「なぜ、黄色なの? 赤に決まってるじゃん」といった意見はルールに反しています。

ダイバーシティの場合、質問されたときに答えなければいる意味がありません。貢献することは、自分が様々なテーマで意見を言える準備していくこと。ダイバーシティの社会の中で自分を買ってもらうために必要なことです。

勘違いしないでほしいのは、それぞれが意見を主張した後に、最終的に全員で議論してどの色かに決定することが必要です。例えば、赤色に決定した場合、他の色を選んでいた人も赤色で会社が美しくなるには、どうすればいいのかを考える。これがリーダーシップとフォロワーシップです。ダイバーシティの目的は総合得点を上げるためなので、最後まで言い張ることはよくありません。

皆さんも是非、ふだんの会議の際に試してみてください。会議を始めるときは、メンバーに「今日は 『I statement』というルールでやってみたいと思います。改善案をいっていくときに、『私は~がいいと思います』という言い方で、一人ずつ順番に発言してください」と、説明しましょう。

自分から「私は~がいいと思います」と発言し、次の方どうぞと回していく。このルールによって、今まで意見を聞いても手を挙げなかった人が、ゲームのような感覚で意見を言えるのではないかなと思いますよ。