『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15) のJ・J・エイブラムスが並々ならぬ情熱を注ぐもう1つの人気映画シリーズが、リブート版の『スター・トレック』だ。折しも『スター・トレック』シリーズ誕生50周年となった今年、J・Jは製作に回り、新たに『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リン監督を迎えた映画第3弾『スター・トレック BEYOND』(10月21日公開)が放たれた。公開直前にJ・Jらが来日。シリーズで機関士スコット役を演じ、共同脚本も手掛けたサイモン・ペッグにインタビューした。

スコット役を演じ、共同脚本も手掛けたサイモン・ペッグ

これまで何度も宇宙の最果ての領域を探索してきた宇宙船エンタープライズ号のクルーたちだが、ここへ来て目的地への到着直前に、無数の飛行物体の襲撃を受け、エンタープライズ号が撃破されてしまう! さらにカークたちクルーはバラバラになり、それぞれが命懸けのミッションに挑んでいく。

先日開催されたジャパンプレミアでは、J・J自身が「自分は監督していないけど、本作が3作の中で一番面白い作品になった」と太鼓判を押した『スター・トレック BEYOND』。その骨組みを作ったサイモン・ペッグが、試行錯誤しながら行った脚本作りについて語った。

――1作目でリーダーシップが芽生え、2作目で頼もしいキャプテンとなったカークですが、今回の3作目では、指揮官として苦渋の選択を強いられます。脚本上は、どういう狙いがあったのでしょうか?

今回のカークは父親が亡くなった年を越えるので、そこから彼がどういう影響を受けるのかを考えていったんだ。もともと彼がエンタープライズ号のクルーとして参加することになったのも父親という存在があったからで、それは自分が父親の期待に応えられるかどうかという賭けでもあった。そんなカークが船長としての自分の存在意義に疑問を持ち始めるんだ。そのエピソードと、悪役の新キャラクターであるクラールとを照らし合わせて描こうと思ったんだ。

――『スター・トレック』シリーズ誕生50周年ということで、脚本を書く上で往年のファンたちを意識しましたか?

50年の歴史があるシリーズで、キャラクターにもなじみがあるし、実際に僕も共同脚本を手がけたダグ・ユングも『スター・トレック』ファンだった。言うまでもなくたくさんの知識をもっていたけど、それをひけらかすのはどうかと思った。なぜなら今回の『スター・トレック BEYOND』で初めてシリーズを観る人もいるから。自分たちは熱烈なファンで百科事典並の知識をもっているけど、今回は初参加する方々も楽しめる作品にしたかったので、マニアックにしすぎないようにしたつもりだ。

――エンタープライズ号のクルーたちの長旅でルーティン化している日常にスポットを当てた物語も新鮮でした。

そういう側面はこれまで出してこなかったし、追求もされてこなかったでしょ。でも、実際彼らクルーたちは非常に限られた空間で長期に渡って場を共有しなければいけないわけで。だいたい3年くらい寝食を共にする状態が続く中で、いろんな冒険は経験していくでしょ。きっと宇宙船での旅はどこか退屈なものになっているだろうし、共同生活もルーティン化しているだろうから、そのことに触れてみるのも面白いんじゃないかと思ったよ。

――今回、エンタープライズ号が破壊され、クルーもバラバラになってしまうというショッキングな展開を迎え、度肝を抜かれました。

人間関係が構築され、家族のようになった人たちの物理的な絆となっているのがエンタープライズ号だ。それを奪い取ってしまったらどうなるのか? 今回描きたかったのはそこなんだよ。そのままバラバラになってしまうのか? それともまたまとまることができるのか?

危機を迎えることにより、全員がお互いを必要としていて、お互いを思い合っていることが表せると考えた。単に宇宙を探検するという仕事以上に、彼らが築いてきた友情や仲間意識がある。今回はとても乱暴でドラマティックな形で大事なものを取り払われるんだ。絆に対しての試練だね。

――スポックとウフーラの恋愛模様をはじめ、生き生きとしたセリフで人間関係がつづられています。リアルなセリフ回しが見事でしたね。

『スター・トレック』では地球人だけではなく、いろんな種類の人々が登場するけど、結局は個の人間について語っている話なんだ。劇中では見事な架空のものがたくさん登場するけど、一番重要なものは人間関係であったりする。そういう意味では人間関係がリアルに感じられるからこそ、架空のものでさえリアルに思えてくるんだ。物語の心臓部は人間なんだよ。

■プロフィール
サイモン・ペッグ
1970年2月14日、イギリス生まれ。スタンダップコメディアンとしてキャリアをスタート。脚本・主演を務めたエドガー・ライト監督のテレビシリーズ「SPACED 俺たちルームシェアリング」(99~01)で注目され、同監督作『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)で主演を務めた。『スター・トレック』3作すべてに出演し、本作では共同脚本を務めた。他の主な出演作に『M:i:III』(06)、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(13)、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(15)など。

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