――風邪は風邪薬を飲めば治りますか? また、市販薬を選ぶ際の注意点を教えてください。

ウイルスによる風邪は、通常では抗菌薬(細菌をやっつける薬)の適応となることは少ないです。健常人の場合、風邪は軽症のうちに自然治癒することが多いので、むやみに薬を飲む必要はありません。治療の基本は対症療法で、発熱や咳はウイルス感染に対する生体防御反応(ウイルスを体外に排出しようとしている)のため、あまり薬で抑えないのが正解です。

解熱剤や鎮咳薬(咳を抑える薬)は体内からのウイルス排除を阻害し、治癒を遷延させる(風邪が治らない期間を延ばす)可能性があるため、1日3回など定時的には飲まず、症状が強いときだけ飲むことをお勧めします。

また、総合風邪薬はいろいろな成分が含まれているため、薬剤の配合量が少なく効果が不十分となる可能性もあります。配合剤(いろいろな薬が入っている)のため不要な薬剤も入っており、副作用などを引き起こすことも。特に市販薬は、手軽に買えるので安全と思っている方も多いと思いますが、副作用が出たり、普段飲んでいる薬との飲み合わせが悪かったりする場合もあります。薬剤師さんに相談して、自分に合ったものを購入することをお勧めします。

繰り返しになりますが、ウイルス性の風邪では抗菌薬を飲む必要はありません。抗菌薬で治っている感じがするかもしれませんが、自然経過で治っていることが多いです。実臨床をしていると、必要がないことを説明してもなお抗菌薬を欲しがる患者さんがいますが、抗菌薬を内服することで逆に腸内細菌叢(そう)を壊し、下痢になってしまうことも珍しくありません。

ただし、すべての風邪において抗菌薬がダメなわけではなく、一般細菌やマイコプラズマなどによる風邪は、抗菌薬の適応となります。3日以上たっても熱が下がらない場合や、「体を温める」など対症療法を行っても改善しない場合は、病院での受診をお勧めします。

――葛根湯を飲むベストタイミングはいつでしょうか?

漢方薬には、さまざまな種類があります。中でも有名な「葛根湯(かっこんとう)」は体を温める作用が入っているので、風邪のひき始めに飲むのが正解。風邪の症状が強いときに総合風邪薬と同じような感覚で飲んでも効果は薄いです。

症状が強いときには、症状に応じた漢方もたくさんあります。発熱には、インフルエンザにも効くと言われている「麻黄湯(まおうとう)」、咳には「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」など、市販されているものも種類が豊富です。

"漢方は効果がわかりにくいし飲みにくい"という方も多いと思いますが、実は私もそうでした。しかし以前、風邪をひいたときに「麻否甘石湯(まきょうかんせきとう)」を内服したところ、咳がピタリと止まりました! いろいろな種類の漢方があると思いますので、効能を確認し内服してみてください。

――「体を温めて汗をかく」「氷枕で冷やす」など、風邪にはさまざまな対処法がありますが、病院に行く前にとるべき対処法について教えてください。

風邪をひいたときは対症療法が基本となります。寒気がするときは体を温めることが大切です。発熱してつらいときは頭や首、腋か(ワキ)や鼠径(そけい)部を冷やします。食事がとれるときは消化の良いものを摂取し、食べられないときは脱水予防のため白湯(さゆ)などを摂取しましょう。また、ビタミンCは風邪予防のみならず、風邪をひいた後、ウイルスで傷ついた細胞の修復にも効果的との報告もあります。

ただし、基礎疾患がある方(心臓・肺・腎臓が悪い方、糖尿病の方、免疫不全の方など)や妊婦さん、小児や65歳以上の高齢者の方などは悪化することがありますので、早めに病院で診てもらうことをお勧めします。

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取材協力: 大川原華織(オオカワラ・カオリ)

内科医。En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。