子連れで飛行機を利用する場合、事前に知っておきたいことがいろいろある。また、機内で子供にプレゼントされるおもちゃをよく見てみると、大人にとっても魅力的なおもちゃであることも。そこで今回、ANAで子連れ飛行機旅をする前に知っておきたいことと、おもちゃ開発の裏側を聞いてみた。

機内で子供たちにプレゼントされてきた歴代のおもちゃたち。一つひとつはさまざまな観点から吟味されている

おもちゃには安全・機内使用・ANAらしさを

ANAでは国内線・国際線ともに、小学校低学年くらいまでを対象におもちゃをプレゼントしている。搭載数に限りがあり、また、在庫切れになる場合もあるが、通常は2種類の中から選べるようにおもちゃをそろえている。

ANA商品戦略部・シニアコーディネーターの小峰貴子さんによると、大体1年前からコンセプトを考えて入札要件を作成し、さまざまな会社におもちゃの製造を依頼するとのこと。その数は100種類にもおよび、現場で働く客室乗務員やママ・パパ社員、また、機内スペースの観点から搭載担当者の声も反映し、最終的に数種類のおもちゃを選ぶという。

「空から見る世界遺産」はむしろ、大人がうれしいかも

では実際、どのようなおもちゃをコンセプトにしているのか。具体的な基準についてうかがうと、まず、なめても大丈夫な塗料を使っているか、指を切ってしまわないかというような安全面を配慮し、基本的にSTマークが取得できる玩具(絵本などは対象外)を採用している。またそれ以外にも、飛行機の中という観点から配慮しているコンセプトもあるようだ。

「多くの方がいらっしゃる空間ですので、音が出ないもの、投げて遊ぶようなものではなくその座席内で安心して楽しく遊べるものを要件にしています。また、飛行機を降りた後でも遊べるものやANAらしさを伝える記念品になるもの、というのも大切にしています。特にここ最近では知育系のおもちゃを充実させています」(小峰さん)。

人気のおもちゃは大人もはまるあのおもちゃ

過去の人気おもちゃにはどんなものがあるのか聞いたところ、書いて消せる「お絵かきボード」や、飛行機や犬、フラミンゴなどさまざまな形に変えられる「くねくねパズル」が好評だったとのこと。おもちゃは子供がひとりで集中して遊べるものであるほか、同伴者とコミュニケーションをとることができるものを重視しているようで、このくねくねパズルは一緒に作る楽しみももたらしてくれるだろう。

「くねくねパズル」の説明書には、完成形だけが描かれているものもある。それだけを参考にして作るのは、大人もなかなか難しい

実際にこのくねくねパズルに挑戦してみたところ、ねじれ方向にもくねくね曲がるため、大人でも「あれ? どうなっているんだろう」と悩んでしまうほど。「柔軟な発想ができる子供の方が、案外楽に作れるかもしれませんね」と小峰さん。「ちょっと貸してごらん」と夢中になって、つい子供からおもちゃを取り上げてしまうことのないように気をつけていただきたい。

2016年現在は、「お絵かきボード」とB787をモチーフにした「飛行機型ビニール風船」が提供されている。B787をよく見てみると、「Inspiration of JAPAN」と実機同様にタグラインが描かれているなど、ちょっと芸が細かいのもポイントだ。

手を汚すことなく書いて消せる「お絵かきボード」もANA仕様に

飛行機型ビニール風のB787は、膨らませる前はとってもコンパクト

おもちゃは在庫がなくなり次第、新しいおもちゃに切り替えるようで、現在のおもちゃは大体2017年2~3月に切り替わる予定とのこと。新しいおもちゃはすでに候補が絞られているとのことなので、次はどんなおもちゃが登場するのか楽しみにしておきたい。

幼児・小児の料金は?

ANAが子連れ飛行機旅でサポートしていることは他にもいろいろある。一般的に飛行機には生後8日から搭乗できるが、ANAにおける子供に対する料金は国内線と国際線で規定が異なる。国内線では、座席を使用しない2歳までの幼児であれば大人ひとりにつき幼児2人まで同伴でき、同席となるひとりのみ無料で搭乗できる(同伴者と別席の場合は小児料金)。同伴者と同席にできるのは2歳までで、3歳~11歳は小児料金が適用される。

一方、国際線では1歳までの幼児は同伴者と同席で大人運賃の10%の運賃となり(大人ひとりが同伴できる幼児は2人まで、ひとりは小児運賃を適用)、2歳~11歳の小児は大人運賃の75%の運賃となる(同伴者が必要)。なお、5歳からひとり旅も可能だが料金は大人運賃となる。5~11歳のひとり旅に対しては「ANAジュニアパイロット」という、出発空港から到着空港までをスタッフが案内するサービスを展開している。このサービスは無料で利用できるが、電話予約と同意書の提出が必要となる。

事前予約で使えるサービスがいろいろ

またANAでは、空港や機内で以下のサービスを展開している。中には事前申請が必要なものがあるので、利用したい場合は申請を済ませておこう。これらのサービスはいずれでも無料で提供している。なお、粉ミルクを搭載しているのは国際線のみだが(数・種類に限りあり)、国内線でもミルクを持参していれば客室乗務員が作ってくれるので、希望者は声をかけるようにしよう。

注意事項として、ANAではチャイルドシートの貸し出しはしておらず、子どものチャイルドシートの利用は必須ではないが、利用希望者(座席予約必須で小児運賃)は持ち込みが必要となる。日本(MLIT)、欧州(ECE R44)、米国(FMVSS1)承認のチャイルドシートか、CARESの利用を呼びかけており、可能な限り窓側席を指定することを求められる。窓側席以外を指定した場合、座席移動をお願いされる場合もあるという。詳しくはANAオフィシャルサイトを参照。

妊娠中の人には「マタニティマークタグ」をプレゼント

妊娠中の人には、ANAオリジナル「マタニティマークタグ」を配布しており(日本国内ANA空港カウンターで対応、国内・国際カウンターともに)、空港でのチェックインカウンターから搭乗ゲートまで(ラウンジ利用者はラウンジまで)の案内サポートを実施(事前の電話予約が必要)。特に出産予定日を含め28日以内の乗客は診断書("航空旅行を行われるにあたり、健康上支障がない"を医師が明記したもの)の提出が必要となる。

ANAが国内線利用で用意しているもの
・空港で利用できるベビーカー(空港によって異なる。当日空港での問い合わせで利用可能)
・電動カートサービス(羽田空港第2旅客ターミナル限定で、搭乗口まで子供を連れての長距離歩行が不安な乗客に貸し出している。当日空港での問い合わせで利用可能)
・事前改札サービス(2歳までの幼児同伴者や妊娠中の人を優先的に機内へ案内)
・ベビーベッド(一部搭載のない機材もある。事前予約が必要)
・MまたはLサイズの紙おむつ(数に限りがある)
・機内化粧室に設置されたおむつ替え専用テーブル(一部搭載のない機材もある)
・おもちゃや絵本

ベビーカーの一例

ANAが国際線利用で用意しているもの
・空港で利用できるベビーカー(空港によって異なる。当日空港での問い合わせで利用可能)
・ベビーベッド(一部搭載のない機材もある。事前予約が必要)
・粉ミルク(数・種類に限りがあるため、必要な人は持参することを推奨)
・MまたはLサイズの紙おむつ(数に限りがある)
・子供用グッズ(ANAオリジナルおもちゃ、子供用スキンケアなど)
・赤ちゃん用・子供用の食事(スペシャルミール。事前予約が必要)
・機内化粧室に設置されたおむつ替え専用テーブル

ベビーベッドの一例

ANAが国際線で提供している子供向けの機内食は、アレルギー対応食の他、離乳食(0カ月~1歳用、瓶詰めのピューレやスープなど)とチャイルドミール(2歳以上6歳未満が対象。6~11歳の希望者にも提供可能)がある。特にチャイルドミールは、"デコ弁"風の見た目のカラーやデザインにこだわったメニューとなっている。"デコ弁"風のチャイルドミールは2013年12月から始まり、実際に子育てをしているANAのシェフたちで"パパママシェフ"チームを結成し、「わが子にも安心して楽しく食べてほしい」という想いを込めて作っているという。

"デコ弁"風のチャイルドミールは素材にもこだわっている(過去提供例)

子連れ飛行機旅は何かと心配が絶えないかもしれないが、各航空会社は安心して飛行機を利用してもらえるよう、さまざまなサービスを用意している。「そんなこともやってくれるの!? 知らなかった……」ということのないよう、利用する前にぜひ一度、各社のサービスをチェックしていただきたい。

※記事中のサービスはANAが2016年9月現在実施しているもの。年齢は搭乗日の年齢