すでに国内でrTMS療法を自由診療として実施しているクリニックなどもある。ただ、もしも受診・治療するとなったら、「rTMS専門でやっている医療機関より、うつ病の治療と診断をきちんとやっている医師や医療機関の方が包括的に治療ができてよいのでは」と鬼頭氏は指摘する。
実際、ある医療機関でrTMS療法をやってから、セカンドオピニオンの意味も兼ねて基幹病院を訪れ、「あの治療は本当に効くのですか」などと医師に尋ねる患者もいるとのこと。また、パーソナリティー障害が主体の患者など、そもそもうつ病ではない患者にrTMS療法を実施している例も散見されるという。rTMS療法を含めたうつ病治療を包括的かつ効果的に提供してくれる医療機関は、現時点ではまだ限られているようだ。
また、副作用の問題もある。治療を重ねるうちに自覚する痛みはなくなってくるそうだが、rTMS療法患者の2割から4割は刺激部位の痛みなどを訴えてくると鬼頭氏は話す。また、副作用としての頭痛を感じている患者も3割から5割程度いるそうで、けいれん発作を起こす割合も0.10%と低いがゼロではない。
ストレス社会では誰しもうつ病になる可能性が
うつ病は当事者だけではなく、家族やパートナー、友人にまで影響が及ぶ。もちろん、当事者もなりたくてうつ病になったわけではないが、ストレス耐性も人によって異なる。同じ量の仕事をしていても、物足りなさを感じる人もいれば、過度の負担に感じる人もいる。
そして、いつ・何がきっかけでストレッサーが自分の身に襲い掛かってくるかは誰にもわからない。ストレス社会に生きる私たちは、誰もがうつ病になってもおかしくないと言えよう。
そんなうつ病に悩みながら、現状の治療法では症状が回復しない人たちにとって希望の光となり得る可能性を秘めたrTMS療法。現在、日本ではうつ病治療機器として薬事承認審査中で、保険収載のための適正使用指針を準備している段階とのことで、広く一般の人たちが利用できるのはまだまだ先かもしれない。
もしも今すぐにrTMS療法を希望するというのであれば、うつ病に関する包括的ケアができる施設探しのため、信頼できる医師に相談するなどして、適切な医療機関を見つけることが治療への第一歩となるだろう。