「Wake Up, Girls!」3rd LIVE TOUR「あっちこっち行くけどごめんね!」のラストを飾る東京公演が2016年8月28日、東京・ZEPPダイバーシティ東京にて開催され、『Wake Up, Girls!』島田真夢役の吉岡茉祐、林田藍里役の永野愛理、片山美波役の田中美海、七瀬佳乃役の青山吉能、久海菜々美役の山下七海、菊間夏夜役の奥野香耶、岡本未夕役の高木美佑が出演。千秋楽となる東京公演はサプライズの生ライブ演奏で行われ、「Wake Up, Girls!」が10月アニメ『灼熱の卓球娘』エンディングテーマ「僕らのフロンティア」を担当することが発表された。
毎年夏にライブツアーを行ってきた「Wake Up, Girls!」3度目の暑い夏は、舞浜公演から始まり、大阪、新潟、仙台、沖縄、福岡、そしてファイナルの東京といった7都市14公演を巡る過去最大のツアーとなった。会場の数がメンバーの数と同じ七会場ということもあり、今回のツアーではプリンセス制度を採用。各公演のプリンセスは新キャラクターソングをライブ披露したりと大きくフィーチャーされる趣向だ。
イベント開演前の影ナレは、文章を書くのが好きなセンター・吉岡茉祐が書き下ろすのが恒例だが、東京公演では「田中美海の元気になるメラメラジオ 第一回にして最終回」と題して、パーソナリティは東京公演プリンセスの田中、ゲストはツアーファーストの舞浜でプリンセスを務めた高木という趣向。メンバーで実は一番涙もろいのは田中? いやいや高木は練習の時、「少女交響曲」が良い曲すぎて泣いてしまって……という内容だったが、どこまでがフリートークで、どこからが吉岡の目を通しての台本なのかを考えるとちょっと面白い。
今回のツアーは冒頭から最新作劇場版主題歌の「Beyond the Bottom」でスタートするちょっと異色のセットリスト。バンドというよりはフルオーケストラがほしくなる楽曲だが、生音が持つ力はやはり圧倒的。千秋楽の夜公演というラストオブラストの一曲目、リーダー・青山のソロでボーカルがちょっと揺れても生の醍醐味、ぐらい安心して見られるのも重ねてきた経験値ゆえだろう。そこから「少女交響曲」という続・劇場版楽曲2曲続けての披露となったが、照明やスモークの演出も圧倒的で、スタッフサイドも含めたファイナルに賭ける意気込みがびしびしと伝わってくる。
「ついにこの時が来てしまいました。本当にラストですよー! お気づきの方もいると思いますが、今日は生バンドです! 最高に盛り上がっていってください、よろしくお願いします!」と吉岡が改めて生バンドであることを告げ、高木からは「中国で生配信されてるんだって。にーはおー!」との知らせも。それを受けて山下が「ニーハオ謝謝ラブラブ!」とキュートにたどたどしく叫ぶのがいかにも彼女らしい。
新曲で畳み掛けるブロックの「HIGAWARI PRINCESS」は、各公演のプリンセスがプリンセスステッキを持って中心に立つまさに日替わりな趣向。バトントワリング的なスティック捌きが得意な田中は他公演でもステッキをくるくる回す見せ場があったのだが、プリンセス担当の東京公演ではステッキを高々と投げ上げてキャッチする大技にパワーアップしていた。実波のうんめーにゃ! を思わせるうんめーニャンニャンポーズもとびきりキュートだ。新曲コーナーで驚かされたのは、高木・田中・永野チームが3人ユニットで見せた「タイトロープ ラナウェイ」で、ダンスのキレ味とシンクロ具合がツアー当初に比べると格段に進化。振付は永野が担当しているにも関わらず、パフォーマンスでは高木が引っ張っている感すらあったのには驚いた。プリンセスソロでは田中が新曲「それいけオトメ」を初披露。初披露にもかかわらず、昼公演よりも夜公演のコールが何倍も揃っていたことがとても嬉しそうな田中だった。
今回のツアーではI-1楽曲を歌うカバーコーナーも行われたが、昨年までの「企画コーナー」的な感じではなく、「止まらない未来」「運命の女神」、そして公演日替わり曲をがっつり歌う構成。日替わり曲としてはネクストストームの「レザレクション」や、志保センター時代の「ジェラ」など多彩な楽曲が歌われてきたが、ラストは「リトルチャレンジャー」。吉岡演じる島田真夢がセンターを務めていた頃の初期I-1club曲、I-1clubの原点と言うべき曲だ。
原点回帰、それこそがツアーファイナルの明確なテーマだった。「言の葉 青葉」を歌うためにステージに登場したメンバーは、東京公演だけのサプライズとして制服を着用。はじまりの劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』ではWUGの7人が制服姿で勾当台公園での「初めてステージ」に立ったが、現実のWUGの7人もまた、2013年夏ワンフェスでの初お披露目からしばらくは制服姿でステージに立っていた。まさに原点回帰なわけだが、吉岡の「原点回帰の意味をこめて、この制服を選びました。もうみんな、年をいくつか重ねちゃったけど、もう現役(の女子高校生は)いないけど、それでもこの格好だと『Wake Up, Girls!』だって、思うでしょ?」との言葉には、重ねてきた時間に対する自負も感じられる。見る側も3年前は「タチアガレ!」の後半ではあんまり跳べなくなってたよな、なんてことも思い出したりする。余談だが、ツアーでは高木のジャンプが高いなぁ……と思うのが定番だったのだが、千秋楽ではみんながめいっぱい飛ぶなか永野のジャンプが一番高かったりして。メンバーもまたテンションが高まっていることが伝わってきた。
アンコールでは、2016年10月からスタートするTVアニメ『灼熱の卓球娘』のエンディングテーマ「僕らのフロンティア」が初披露された。「Wake Up, Girls!」の7人がWUGの名義のまま、他作品の主題歌を担当する。それは「Wake Up, Girls!」にとって新しいチャレンジであり、新章のはじまりといってもいい出来事だ。作り手や「Wake Up, Girls!」メンバーの想いや物語を色濃く反映したこれまでの楽曲とはかなり色合いが違い、『灼熱の卓球娘』という作品にエンディングテーマらしく寄り添っていく楽曲であることがアーティスト「Wake Up, Girls!」としての活動であることを実感させる。その中にもWUGらしさをそっと織り込んでくるあたりが、流石は「Wake Up, Girls!」の盟友と言ってもいい作詞家・只野菜摘だろう。
そして、メンバーみんなが今日のプリンセス、田中への思いを伝えていたのが印象的だ。山下がデビュー前の合宿時代のことを語ったり、吉岡がもし誰かにセンターを譲らなきゃいけないとしたらそれは美海、と語ったり。最初のツアーの年、『ハナヤマタ』との掛け持ちで、ともに記憶が無いぐらい大変な夏を過ごした奥野は誰よりも田中との思い出があるはずだが、「美海にメッセージ言ったら絶対泣いちゃうから、あとでお手紙書く!」と言葉にはしなかったのがとても奥野らしかった。そんなメンバーの愛をたくさんぶつけられた田中が「WUGで良かったなって思ったの! 本当に『Wake Up, Girls!』大好きです! ワグナーさん大好きです!」と叫んでいたのは、とても幸せな空間だった。
MCでちょっとびっくりしたのは、青山が同日に開催されていたアニサマに出たかった、また絶対出てみせると悔しさいっぱいに叫んだこと。アニサマの舞台・さいたまスーパーアリーナは、『Wake Up, Girls!』の作品世界ではI-1アリーナとして描かれる。そのあこがれの場所に向けてあくまで目線は高く叫んだ言葉は、これこそ『Wake Up, Girls!』であり、「Wake Up, Girls!」だなと感じさせられた。
ライブのラストは「7 Girls War」と「極上スマイル」であくまで明るく楽しく。新人の頃、運動量の多い「7 Girls War」を初披露して息も絶え絶えになったメンバーが、「いつかワグナーさんたちが一緒に歌ってくれるようになったら、もっと余裕を持って歌えると思う」と語っていたことを、コールの大合唱に包まれたフロアで思い出していた。
終演後のスクリーン告知では、2016年12月に「Wake Up, Girls!Festa. 2016 SUPER LIVE」が幕張メッセで開催されることが発表された。同じライブに「Wake Up, Girls!」の7人はもちろん、「I-1 club」の加藤英美里、津田美波、福原香織、山本希望、安野希世乃、上田麗奈、「ネクストストーム」の大坪由佳、安済知佳、高野麻里佳、甘束まおが参加するのは素晴らしい知らせだった。
最後に、永野の言葉でレポートを締めくくりたい。「短い時間で振付も覚えてくれて、この7人だからこそツアーを乗り越えられました。このメンバーで本当に良かった。最初私たちが制服で踊った時はこれくらい(あまり多くない)のお客さんだったのが、確実に『Wake Up, Girls!』の輪は広がっています。『Wake Up, Girls!』のことが、好きですか? (大歓声)。その気持ちをずーっと忘れないで下さい!」
「Wake Up, Girls!」3rd LIVE TOUR「あっちこっち行くけどごめんね!」
東京公演夜の部・セットリスト
M-01 : Beyond the Bottom
M-02 : 少女交響曲
M-03 : 素顔でKISS ME
M-04 : HIGAWARI PRINCESS
M-05 : タイトロープ ラナウェイ
M-06 : outlander rhapsody
M-07 : 歌と魚とハダシとわたし
M-08 : それいけオトメ
M-09 : 止まらない未来
M-10 : 運命の女神
M-11 : リトル・チャレンジャー
M-12 : 言の葉 青葉
M-13 : 16歳のアガペー
M-14 : タチアガレ!
【アンコール】
EC-01 : 僕らのフロンティア (TVアニメ『灼熱の卓球娘』EDテーマ)
EC-02 : 7 Girls War
EC-03 : 極上スマイル