福岡の名物「水炊き」の専門店・博多とり田。ミシュランガイド福岡・佐賀2014にも掲載され、来福した著名人も多く訪れる実力店だ。しかし、最近は坦々麺で話題の店となっていて、ダウンタウンの松本人志さんもその味わいを絶賛。一躍注目を浴びている。

坦々麺の専門店は、今秋で開店1周年を迎える美野島店が元祖だが、今春はKITTE博多、今冬の11月には天神へと出店が相次いでいる。麺類にうるさく、並ぶのが嫌いな福岡市民が、行列を作るほどの人気となっている究極の博多坦々麺とはどのようなものなのか。早速紹介しよう。

月替わりのランチメニューから専門店へ異例の昇格!

「とり田特製博多坦々麺」(950円)。辛さは普通、大辛、激辛の3種類からセレクト可能。激辛は普通の10倍の辛さ

平日のお昼時はもちろん、土日の15分待ちは当たり前となっている「博多坦々麺 とり田 美野島店」。水炊き専門店として不動の地位を誇る博多とり田が、一体なぜ坦々麺なのだろうか。

「3年前、『博多水炊き とり田 薬院店』の月替わりランチメニューとして出していた坦々麺が、『おいしい! 』とSNSなどで評判となったことがきっかけです」と語るのは、代表の奥津啓克氏。提供を始めて3年目になると、客のほうから「早く坦々麺が出ないかな」という声まで届くようになったという。「鶏のスペシャリストとして、地元の方へ新しい郷土食を提案したい」。その情熱により「博多坦々麺」という新しい定義が生まれ、専門店まで出店するに至ったのだ。

そして出来上がったのが「とり田特製 博多坦々麺」(950円)。水炊きのだしを100%使用したスープは、マイルドでありながら、鶏のだしがしっかりときいている。自家製ラー油のピリッとした辛さがありながら、飲みやすいのだ。特製のちぢれ麺には、食べ応えのある粗めの鶏ミンチに、シャキシャキの山盛り野菜、そして半熟卵のトッピングが見事に調和。こだわりが詰まった一品は、ぐうの音も出ないおいしさだ。

こだわりすぎ! 水炊き屋のスープへの意地

水炊きの専門店が作る坦々麺ということで、何よりもこだわっているのは、やはりスープ。博多担々麺のスープは、100Lほどが入る1つの鍋に、40~50羽というぜいたくすぎる量の九州産・丸鶏を使用。6~7時間煮込むことによって作られる。煮出した丸鶏は、まだまだ鶏肉がたっぷり付いているにも関わらず、そのまま処分してしまうそうだ。もったいないようにも思えるが「全てはおいしさのため」なのだとか。

厨房で作られる丸鶏スープ。代表の奥津啓克氏は「白濁スープはデリケートなので神経を使います」と語る

スープの濃度は鶏の状態によって変わる上、化学調味料・保存料を一切使用していないので、品質管理には細心の注意が払われるという。煮出したスープは丁寧にこし、煮沸したあと、さらに煮込むことで味の濃度を調整。そうしてやっと、完成する。

もやしやニラ、ねぎ、煮玉子など、トッピングの素材は、福岡市に隣接する糸島産を使用。ラー油も2日に一度、店舗で手作りしている。数種類の唐辛子とスパイス、にんにく、しょうがといった薬味に、200度の油を一気に混ぜ合わせる作業を伴う自家製ラー油は、作るのも一苦労。「作っている時は、目も痛いし、おしりも痛いです」と語る代表・奥津氏の言葉には、おいしさの追求のためなら、いかなる苦労もいとわない、料理人としての姿勢がにじみ出ている。

センスが光る、波佐見焼きのインテリアと八女市星野村産の水出し玄米茶

また、こだわりは味だけではない。辛くてまろやか、滋味深い担々麺のおいしさを引き立てる冷たい玄米茶は、お茶どころ・福岡県八女市星野村産のもの。テーブルウエアも、長崎県・波佐見焼の窯元に特注したオリジナルを使用しているので、注目してみてほしい。

鶏を知り尽くした名店が作る、唐揚げも美味!

そして、担々麺と一緒に必ず食べたいのが「むね唐揚げ」(1個130円)と「もも唐揚げ」(1個170円)。こちらも九州産の鶏を使用し、鶏本来の魅力を最大限に引き出すため、サイズや揚げ方に至るまでこだわったという。「使っている鶏が抜群においしいので、にんにくなし、化学調味料なしで作っています」と代表の奥津氏。口の中で弾むような食感と意外にもさっぱりとした後味に、ヤミツキになること間違いなしだ。ゆずこしょうと特製のぽん酢をかけて、頂こう。

「むね唐揚げ」(1個130円)と「もも唐揚げ」(1個170円)。完熟黄柚子がベースのゆずこしょうをつけ、特製の黄金ぽん酢をかけて、さっぱりと頂く

また9月下旬までは、「冷やし坦々麺」(950円)もお目見え。ピリッと辛くて丸みのある冷製水炊きスープに、冷たいつるつるの麺がからむ、新感覚のメニューだ。まるでレアのような食感の鶏むね肉にアボカド、豆腐、ミョウガや水菜といったサラダがのっていて、ヘルシーな仕上がりとなっている。麺はグルテンフリーのこんにゃく麺にも変更できる。

「冷やし坦々麺」(950円)。生野菜がどっさりのって、まるでサラダのよう! 麺はグルテンフリーのこんにゃく麺に変更できる(博多坦々麺も同様に変更可)

同店では、本家本元の水炊き・雑炊などは提供していない。なぜなら、専門店で水炊きを食すことが少ない、地元民への思いがあるからだ。「福岡には、水炊き専門の博多とり田が2店舗あるので十分です。地域の人に愛されて、何度でも来店したくなる店があることが町の魅力になり、やがてその料理が博多の新名物になると思います」と代表の奥津氏。ミシュラン獲得の水炊き専門店でしか作ることができない、伝統と斬新さがクロスした博多坦々麺。福岡の新名物となるであろうこだわりの一品を、ぜひとも味わってみてほしい。

※記事中の情報・価格は2016年7月取材時のもの。価格は税込