――対立と融和を繰り返していた悠と仁が、それぞれの結論を出して決別してしまうラストエピソード(第13話)は、ファンにとってもショッキングな結末になりました。

小林:こういう風に進んだ以上、ああなるしかないな、っていう落ち着きですね。でも、あれでいいのか、っていう部分はあるかもしれません。みんな言いますし(笑)。視聴者にとっては、「仮面ライダーに裏切られてしまう」最終回にも思えるかもしれません。人間の味方としての仮面ライダーではありませんからね。

白倉:もともと、ヒーロー(仮面ライダー)が無条件で人間の味方をする、という部分に違和感がありました。それで悠には人間とアマゾンの両側に立って思い悩んでもらいました。そのクッションとなるのが、アマゾンでありながら人間の仲間のために戦うマモルなんです。雨の中で、悠をめぐって美月とマモルが取り合いをするシーンがあるでしょう。

小林:あれって、シナリオのとおりのセリフではあるんですけれど、シチュエーションがぜんぜん違っていて、画面で観るとちょっと複雑な気持ちになりますね。

白倉:女子高生を取るのか、裸の美少年を取るのか迷う悠(笑)。

小林:シナリオではあんなふうに、どっちを取るの?みたいにはなっていないんですけれどね。

――今後『アマゾンズ』の続編シリーズを含む、新たな配信作品製作の可能性はあるでしょうか?

白倉:『アマゾンズ』に関してはシーズン2というのが具現化しつつあるので、さてどうするか、というのがあります。もしやるにしても、単純な続きをやりたくないなって思っているんです。キャラクターそれぞれに強い愛着があるからなんですが、今後作るストーリーならば「第14話」にしかならないんです。そうしないための作り方を、今から考えるところですね。

――サブタイトルの頭文字がアルファベットの順番で、シーズン1が「M」で終わっているので、「N」から始まる後半があるんじゃないかと、多くのファンが期待しています。

小林:サブタイトルについては、もし何かあったときのためにそういう付け方をしていただけなんです。

白倉:まあ続きがあればいいな、ぐらいの考えですよ。

――映画、テレビに次ぐ映像発信媒体としての「WEB配信ドラマ」の可能性をどうお考えですか。

白倉:映画館のスクリーン、テレビのモニター以上に、PCやスマホの画面は視聴者との距離が近いですよね。これ以上ないほど観る人と画面との距離が近づいたとき、作られるものは二極化されると思っています。ひとつは日常そのもののバラエティ番組、もうひとつは非日常のファンタジックな映像。この小さな画面の奥に、ものすごい世界が広がっていくという、電子遠眼鏡的発想ですね。

――WEB配信として「仮面ライダー」が新たな発展をしていく一方で、王道の日曜朝の「仮面ライダー」でも従来のイメージからかなり逸脱したような意欲作『仮面ライダーエグゼイド』が発表になりました。エグゼイドについてのご感想はいかがでしょうか?

白倉:仮面ライダーって、最初の1号、2号のときから、いわゆる誰が見てもカッコいいと思えるスマートさとは違うものを持っていたと思うんですよ。もともと異形のキャラクターなのが、カッコよく見えるという瞬間、そこにヒロイズムがあるのではないか。この先も「何それ?」と思うようなキャラクターがカッコよく見える瞬間が続けばいいな、と「仮面ライダー」シリーズには思っています。

「エグゼイド」って名前は気に入っていますよ。「ドライブ」とか「ゴースト」だと、名前を聞いただけでだいたいどんなライダーが想像ついてしまう、するっと受け入れられてしまうようなものでは本来いけないんです。

小林:デザイン画を見ましたけれど、今度のライダーはスゴいですよね(笑)。

――『仮面ライダー1号』『仮面ライダーアマゾンズ』で1号とアマゾンがリメイクされましたが、今後白倉さんが興味を持つ「仮面ライダー」のリメイク案などがあれば、ぜひ教えてください。

白倉:もともと『仮面ライダーX』が好きだったんですよ。子ども心に、どんどん"テコ入れ"されていくっていうのが観ていてわかるんです(笑)。新しい発想でリメイクされた『X』が観てみたいような気がします。

『仮面ライダーアマゾンズ』は、Amazon プライム・ビデオにて全13話が配信中。テレビ版はBS朝日にて毎週日曜深夜25時~、TOKYO MXにて毎週水曜22時30分~放送されている

(C)2016「仮面ライダーアマゾンズ」製作委員会 (C)石森プロ・東映

白倉伸一郎
1990年に東映入社。91年に『鳥人戦隊ジェットマン』よりプロデューサー補として参加し、以降『仮面ライダーアギト』『仮面ライダー電王』『仮面ライダーディケイド』などのチーフプロデューサーを担当する。現在は東映株式会社取締役、東映テレビ第二営業部長
小林靖子
脚本家。『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー電王』などの平成ライダーシリーズ、『烈車戦隊トッキュウジャー』などスーパー戦隊に代表される特撮作品をはじめ、数多くのTVアニメ、劇場作品を担当