撮影中は孤独

――撮影中のできごとや撮影したシーンで、印象に残っていることはありますか?

岡田将生くんや松坂桃李くんと対峙している時は、現場も緊張感がありました。薪の中で軸になっているのは、自分が殺してしまった元相棒の鈴木と、時を経て現相棒になった、若くてイケイケな青木。その間に挟まれて、青木を鈴木のようにしたくない、と葛藤が出てくる。

撮影中は常に”薪”だったし、ずっと孤独だったなと思います。仕上がりで自分以外の誰かの表情を見て「みんなすごく、薪のこと心配してくれてる!」と初めて気づきました(笑)。岡田くん演じる青木も、怒りもありながら、薪のことを心配する優しい気持ちが見えました。

――原作の薪は中性的で美しいビジュアルとして描かれていますが、メイクや髪型など工夫されたところはあったのでしょうか?

ビジュアルイメージを大切にされる監督なので、スーツや髪型には要求がありました。「美しく、くたびれた青年でいてほしい」と言われていました。ただ、メイクはずっと任せていたので詳細はわかりません(笑)。

演技にかける思い

――生田さんが演技をする時って、感覚的にはどういうものなんでしょうか。憑依するようなものなのか、技術的なものなのか。

すごく簡単な言い方をすると、「自分を騙す」でしょうか。「自分は薪であるんだ」と、刷り込んでいく感じですね、僕の場合は。俳優さんによっては、自分の色を出す方もいると思いますが、僕は役に近づいていきたいですし、気持ちの上ではそう心がけています。

――もしかしたら、薪の時の生田さんと普段の生田さんの脳を見たら変わっていたりとか……。

そうですね、そこまで変わっていればいいですね(笑)。

――そういった自分を騙すような感覚は、俳優という仕事の魅力でもありますか?

やっぱり、自分じゃない誰かの人生を過ごせるのはすごく魅力的です。一度足を踏み入れてしまうと、なかなか抜け出すことができない世界だと思います。

――たとえば演技プランについて、ご自身から何か提案するようなことは。

俳優なので、言葉で言うよりも、目に見えなきゃ意味がないとは思っています。監督が言っていることや、台本に書いていることの解釈を、お芝居で出していく、といった意味での自己主張はありますね。

観た人がぐったりする作品に!?

――今回大友監督とは初タッグになりますが、作品や現場には以前から興味をもたれていたのでしょうか?

僕たち俳優にも噂が届く、すごく興味のある監督の1人でした。作品に対する欲をすごく感じますし、ある種、傍若無人というか猪突猛進というか。ものをつくる時には様々な制約があって、その制約の中で頑張ることが多いと思いますが、そこを「俺はこれが作りたいから」と突破していく方です。それはもう、ものづくりに対する欲望だと思いますね。

――これは大友監督らしい、と思ったシーンはありますか?

人の脳内を映像化するところは、恐ろしさすら感じるくらいのリアルさだと思います。劇中にもあるけど、人の脳が見た記憶であって実際のものとは違う。壮大な景色であっても見る人にとっては地獄に見えるし、優しそうな人が鬼に見える瞬間もあるし、この映画の本質かなと思いましたね。

――エンタメ作品でありながら、人の倫理感などにうったえかける内容でもありますよね。

実際、本当にこういう世の中が来てもおかしくないところまで科学が進歩していますよね。そういう意味での問題提起もきちんとしながら、エンタテインメント作品ができたと思います。いやもう、観終えたらぐったりだと思いますよ。「時間あるから『秘密』観よう!」と思って映画館に入ったら、えらい目に合ってしまう(笑)。「すごいものを観た」という気になってくれるんじゃないかなと、期待しています。

秘密 THE TOP SECRET
死んだ人の脳をスキャンして、記憶を映像化し、難事件の謎に挑む特別捜査機関「第九」。室長の薪(生田斗真)、新人捜査官の青木(岡田将生)らに、死刑囚・露口(椎名桔平)の脳を見て、行方不明の長女・絹子(織田梨沙)を探し出すというミッションが与えられた。8月6日公開。(C)2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会