夏といえば沖縄旅行。沖縄旅行といえば海! と思いがちだが、内陸部となる那覇市の首里エリアにも注目したい。琉球王国の城下町として栄えた首里は、言うなれば沖縄の"古都"だ。「ダブルツリー by ヒルトン那覇首里城」の協力により、今回は首里エリアで琉球文化を巡る1日を提案しよう。

(→グルメ編はこちら)

首里で琉球文化を巡る1日を紹介

まずは首里城を見学

首里の琉球文化といえば、欠かせないのが首里城だ。琉球王の居城であり政治の中心でもあった首里城は、1925年に正殿が国宝に指定されたが、第二次大戦で焼失。現在は当時の姿を再建した首里城を見ることができる。

首里城正殿。手前の広場が「御庭(うなー)」で、縞模様は官吏の整列に使用した

首里城内部および「御庭(うなー)」の見学は有料(大人820円)だが、「御庭」手前の「奉神門(ほうしんもん)」までは無料で見学できる。首里城は丘の頂上に建っているため、「守礼門」から「奉神門」まで坂を登りながらいくつもの門をくぐることになるが、それぞれの門の名前にはちゃんと意味があるのだ。

「奉神門(ほうしんもん)」より奥のエリアは有料区域となる

例えば「奉神門」の2つ手前にあたる「瑞泉門(ずいせんもん)」の「瑞泉」は、「立派な泉」「めでたい泉」などの意味を持つ。この門の近くには「龍樋(りゅうひ)」があり、龍の頭をかたどった彫刻の口からこんこんと水が湧き出ている。泉とはこのことだ。

「瑞泉門(ずいせんもん)」。「瑞泉」の名は湧き出る清水にちなむ

「龍樋」の水はかつて首里城の生活飲料水として使われ、王族も口にしたそうだ。龍頭の彫刻は1523年に中国から持ち込まれたもので、一部が補修されているが、当時のままの姿を残している。素通りしがちだが、実は隠れたパワースポットである。

「龍樋(りゅうひ)」は隠れたパワースポットだ

首里城の内部も戦後再建されたものだが、一部に往時の基礎が残る。日本と中国の建築様式が混ざり合った独特の雰囲気を楽しみながら、琉球王国の興亡に思いをはせてみよう。

●information
首里城公園
所在地: 沖縄県那覇市首里金城町1-2
無料区域開園時間: 8:00~19:30(7~9月は~20:30)
有料区域開館時間: 8:30~19:00(7~9月は~20:00、12~3月は~18:00)

古道でパワースポットを巡る

「金城町石畳道(きんじょうちょういしだたみみち)」。戦火を逃れたわずかな区間が、城下町の風情を伝える

首里城を見物し終えたら、そのまま首里城公園の南側からつながる「金城町石畳道(きんじょうちょういしだたみみち)」を歩こう。この道は琉球王国の軍用道路であった「真珠道(まだまみち)」の一部で、沖縄戦でそのほとんどが失われた今も、金城町に現存する限られた区間が「金城町石畳道」としてその姿を残している。

首里城公園から坂道を下りながら石畳道を行くと、その途中に「首里金城の大アカギ」へと続く脇道がある。アカギとは、熱帯アジアなどに分布する樹木だ。沖縄でも普通に見られる木だが、市街地のアカギは第二次大戦でそのほとんどが焼失。ここで見られる推定樹齢200年以上の大アカギ6本はそれだけでも大変貴重と言えるが、もともとこれらの大アカギが生育する場所は「内金城嶽(うちかなぐすくたき)」と呼ばれる聖地でもある。

推定樹齢200年を超える大アカギが6本生育

この空間そのものが聖域でもある

木のそばに立つ看板によると、かつて豊かな森だったこの場所は、「村人が通る度に霊気を感じるので これはただごとではないと時の王府に願い出て拝所(うがんじゅ)を置き 神々と王府との交流の場と」なった聖域だという。

この中でもひときわ大きいアカギは樹齢300年余を数える。旧暦6月15日にはその木に神霊が降臨し、年に1つだけ人々の願いを聞き上げるとのことだ。戦火を乗り越え、今もなお人々の素朴な信仰を集める大アカギを前にすると、この上なく静かな気持ちになる。

年に1度、神霊が降りるという大アカギ。すぐ近くに観光客で賑わう首里城があるとは思えない静けさだ

●information
金城町石畳道
所在地: 沖縄県那覇市首里金城町1丁目

「瑞泉酒造」で泡盛の奥深さを知る

パワースポット探訪に一息ついたら、次は「瑞泉酒造(ずいせんしゅぞう)」で泡盛の酒造見学といこう。首里城からまっすぐ向かえば歩いて4分ほどだが、「金城町石畳道」からは8分ほどかかる。試飲もしたいならタクシーで移動するのも手だ。

泡盛を造る「瑞泉酒造」

銘酒「瑞泉」を製造する「瑞泉酒造」の名は、先ほど紹介した「瑞泉門」に由来する。瑞泉酒造によると、龍樋から湧き出る水のように「清冽で芳醇な酒造りをめざし、また伝統ある泡盛造りがますます発展し、代々永く受け継がれていくように願い、この泉に因んで銘柄に"瑞泉"と命名した」とのことだ。

酒造の見学は無料だが、団体での見学には事前の連絡が必要となる。見学者は、泡盛や「瑞泉」の歴史をまとめたビデオを見た後、ガラス越しに醸造タンクなどを見ながら、泡盛の作り方の解説を受ける。

実際の原料や設備を見ながら、泡盛の造り方を学べる

見学の後はお待ちかねの試飲ができるわけだが、ぜひ味わっておきたい銘柄が「御酒(うさき)」だ。泡盛の発酵には黒麹菌(くろこうじきん)を使用するが、戦前の菌は先の大戦で全て失われてしまったと思われていた。ところが1998年、故・坂口謹一郎博士が1935年に工場から採取した菌が東京大学に保存されていることがわかり、戦前の味の復刻を目指して商品化に成功。そうしてできた泡盛が「御酒」なのだ。

戦前の味を復活させた「御酒(うさき)」

口に含むと、アルコールの刺激と共に果実のような甘い香りがふくらむ。雑味のないクリアな飲み口が特徴だ。ここでは他にも泡盛を使ったリキュールや、ノンアルコールのもろみ酢なども試飲できるので、強い酒が苦手な人やドライバー、子供も楽しめそう。

試飲で飲み過ぎないように注意!

●information
瑞泉酒造
住所: 沖縄県那覇市首里崎山町1-35
営業時間: 9:00~18:00(見学最終受付17:00)
定休日: 正月三が日

日本で唯一の"サンゴ染め"を体験

酒造見学の後は、ほろ酔い気分を覚ましつつ首里城公園を突っ切って「首里琉染(しゅりりゅうせん)」へ。「瑞泉酒造」からは、歩いて12分ほどだ。同店では、琉球の伝統工芸である「紅型染め」や同店オリジナルの「サンゴ染め」などで作られた着物や生活雑貨などを販売している。

染め物の専門店「首里琉染」

染色の体験も行っており、ここではぜひ「サンゴ染め」を体験したい。「サンゴ染め」は、化石化したサンゴの模様を布に写しとることで柄をつける染色法だ。現在、天然のサンゴの採取は生死を問わず禁止されているが、「首里琉染」では規制前に採取されたサンゴを使用している。そのため、「サンゴ染め」を体験できるのは沖縄の中でも同店だけだ。

「サンゴ染め」体験は、材料費込みで大人3,240円・小学生以下2,700円。Tシャツ・風呂敷・コースター・トートバッグ・手ぬぐいのいずれかの素材を選択できる。欧米からの観光客には、手ぬぐいを染めてテーブルセンターやタペストリーとして使う人もいるそうだ。なんだかオシャレだと思い、筆者もそれにならうことにした。

「サンゴ染め」体験の素材はTシャツ・風呂敷・コースター・トートバッグ・手ぬぐいから選べる

使用するのは、化石化したサンゴ、赤・青・黄・紫の4色の染料、それぞれの色に対応した布玉、とシンプル。まずはサンゴの上に布の柄をつけたい部分を乗せ、輪ゴムで縛って染める部分のシワをよく伸ばす。布玉に染料をとり、ムラがでないようによくなじませてから、サンゴの上の布をこするようにして色をつけていく。

化石化したサンゴで柄をつける

サンゴの上に布をかぶせてシワを伸ばす

染料を染み込ませた布玉でこすると……

布に模様が浮かび上がる

この手順をしっかり踏めば、こするだけで美しい模様が布に浮き出てくる。絵心が壊滅的にない筆者でも気後れすることなく楽しめるところに感動した。小さな子どもを含むファミリーも安心だ。

使用する染料は4色だが、色を重ねて塗ることで混色ができる。黄色の上に青を重ねることで緑色に、といった具合だ。ただし、混色する場合は淡い色から順に重ねていくこと。濃い色の上に淡い色を重ねようとすると、うまく色が混ざらないばかりか、布玉が濁ってしまってキレイな色に染まらなくなる。やってしまったら申し訳なさそうにスタッフにお願いして取り換えてもらおう(筆者は2度やらかした)。

混色も簡単。ただし、必ず淡い色から先に塗るようにしよう

順番を間違えるとこうなる

そうしてひたすら没頭すること1時間半。ついにオリジナルの手ぬぐいが完成した。つい時間を忘れて熱中してしまうので、体験の際は後に予定を詰めすぎないようにするといいだろう。持ち帰った作品は、あて布をしてアイロンをかければ色落ちすることなく使用できる。

完成した手ぬぐい

帰京してから、タペストリーとして飾ってみた。眺めていると沖縄の風を思い出す

●information
首里琉染
住所: 沖縄県那覇市首里山川町1-54
営業時間: 9:00~18:00
定休日:無休

おみやげには幸せ願うアクセサリーを

最後に紹介するのは、県道沿いにひっそりとたたずむアクセサリー店「cicafu metal works(チカフ メタル ワークス)」。よく注意していないと見逃してしまいそうなほど小さな店だが、中には手作りのアクセサリーが所狭しと並んで豊富な品ぞろえだ。カウンターの奥には工房があり、見た目以上に広がりのある店舗に驚く。

アクセサリー店「cicafu metal works(チカフ メタル ワークス)」

品ぞろえは豊富。奥には工房がある

取りそろえるアクセサリーには、銀や真ちゅう製のものが多く、デザインはシンプルでユニセックス。どれも着用し続けるほどに味わいが増し、独自の質感が出てくるという。

シンプルで長く使い込めるアイテムがそろう

おみやげにオススメなのが、琉球王国で主に士族の婚礼の儀式などで使われていたという「房指輪(ふさゆびわ)」のモチーフを使用したチャーム(2,260円~)だ。房指輪には、魚や桃、扇といった7つの房がついており、魚は「食べ物に恵まれるように」、桃は「子孫繁栄・長寿・厄よけ」など、それぞれに意味がある。

琉球王国の士族の間で婚礼の儀式などに使われていたという「房指輪(ふさゆびわ)」

「cicafu」では、戦前の房指輪のデザインを元にした"古典房指輪"のほか、房指輪の7房に日本や世界で使われている吉祥文様を加えた"オリジナル房指輪"も展開。中には、沖縄定番のシーサーもある。贈る人に合わせて、モチーフの意味を考えながら選ぶのも楽しい。

"古典房指輪"は、戦前の房指輪にアレンジを加えたデザイン

日本や世界で使われている吉祥文様を加えた"オリジナル房指輪"も展開している

贈りたい人に合わせて、モチーフの意味を考えながら選んでみよう

なお、同店の通常営業は土・日曜日のみだが、ブログで臨時営業日を確認できる。また、メールや電話で問い合わせれば、予約にてオープンすることも可能とのことだ。使い込むほどに深みが増すハンドメイドのアクセサリーは、大切な人のために持ち帰りたい。

●information
cicafu metal works
住所: 沖縄県那覇市首里儀保町3-9
営業時間: 11:00~18:00
定休日:平日(その他不定休・臨時営業あり。公式ブログにて告知)

かつて琉球王国の中心として繁栄した首里。首里の文化を巡る旅は、沖縄に眠る琉球王国の記憶を辿る旅とも言えそうだ。

なお、今回首里エリアの取材に協力してもらったホテル「ダブルツリー by ヒルトン那覇首里城」は、2泊3日朝食付きの宿泊が当たる「私にぴったりの首里旅」プレゼントキャンペーンを7月31日まで実施している。同ホテルは、首里城守礼門まで歩いて約15分。滞在中に楽しみたい「私にぴったりの首里旅」を投稿することで応募できるので、興味のある方は本稿も参考にしていただきたい。

取材協力: ダブルツリー by ヒルトン那覇首里城

※価格は全て税込