突然の死であっても、覚悟していた場合であっても、いざ亡くなると思考が止まり、すぐ行動できるものではありません。しかし亡くなってからはいろいろ考えている暇はありません。直ちに必要な行動に着手しなければなりません。悲しんでいる暇がないのが、むしろ良いのかも知れませんが、いざとなって困らないために、とっさに必要なお金の問題等は把握しておきましょう。
亡くなったときに必要なお金
家族がなくなったら直ちに葬儀の打ち合わせに入らなければなりません。いろいろ段取りが必要なので、葬儀を依頼する先も事前に契約している場合は別として、いろいろ検討する暇はありません。住まい近くの業者か入院している病院に出入りしている業者にとるものもとりあえず依頼する形になるでしょう。
入院費の支払い+葬式代+火葬費
支払いも葬儀の当日には行わなければなりません。原則、後で払えばよいというわけではありません。盛大な葬儀であれば、かなりの額を用意しなければなりません。場合によっては定期預金等を解約して用意しなくてはならない場合もあるでしょう。
お葬式のいろいろ
今は昔と違ってお葬式も簡単に済ます傾向にあります。家族が亡くなったことに加えて、長い間の看護の末であれば、疲労困憊した状態での大掛かりな葬儀は大きな負担です。特に高齢化社会となり、親族も高齢化している場合もあるでしょう。社会的地位から遠ざかって久しければ、仕事関係の知人も無く、兄弟姉妹や友人も亡くなっているか高齢となっていれば、現実問題として葬儀に出席できる人も子供たちだけというケースも多くなっていくでしょう。家族葬が一般的となり、さらに家族だけであれば形式的な葬儀はむしろ気持ちとはかけ離れたものに感じる場合もあるでしょう。葬儀はせずに直接火葬する「直葬」も増えていくと思います。
大切なのは、本人がどのようにしたかったかということです。どのような葬儀にしたいか、誰に見送ってもらいたいか、戒名等はどうしたいかなど、事前に聞きだしておくと見送る側は安心です。親が高齢化していれば、子供もそれなりの年齢になります。そろそろ老後の人生設計を考える年代です。「自分はこうしたい」と表明すれば、親の希望を確認しやすくなります。
葬儀の費用
葬儀の費用は大きく3つに分かれます。それぞれ細かく設定が可能です。例えば直葬の場合でも火葬場で簡単にお経をあげてもらうこともできます。その場合は多少の寺院費が発生します。食事も大人数での食事でなく、家族で火葬の後に食事の席を頼むこともできます。どうしたいかを葬儀の業者に伝えれば、希望に応じてくれると思います。
支出
・葬儀一式(事前準備、葬儀、火葬までの下記以外の全て)
・寺院費(読経料・戒名料・位牌代)
・飲食費(お通夜料理・告別式料理・会葬返礼品)収入
・お香典
葬儀の費用は規模や内容次第で天井知らずとなります。平均は200万円程度とは言われていますが、直葬の場合はその1/10~2/10程度でも可能でしょう。
宗派によっては墓地等を持たずに合葬方式のところもあれば、戒名を必要としないケースもあります。女性の場合は婚家の方式に従う場合と生家の方式に従う場合等いろいろあるようです。従って夫が戒名は無く、妻がある場合もありさまざまです。
葬儀後の段取り
法事関連
・四十九日等の法要
・墓地の購入
・納骨
・仏壇購入
葬儀後の法要をどの程度行うかによって費用は異なります。また墓地や仏壇が無かったりした場合も取得しようと思えばかなりの費用を必要とします。法事は十分に準備する余裕がありますので無理の無い範囲で行えばよいと思います。
相続関連
・戸籍謄本の取り寄せ(遺産相続協議書の作成)
・年金の受け取り
・相続財産の取得(相続税の支払い)
■戸籍謄本の取り寄せ
戸籍謄本の取得は法定相続人を確定するためのものです。生誕から現在までの謄本を全て取得します。ざっくばらんに言えば、どこかに家族も知らない相続人(子供)が存在しないかどうかを確認するためのものです。生まれてから現在まで同じ家に居住していて、本籍も変更の無い場合は1カ所の法務局にだけに請求すればよいのですが、一般に女性は結婚によって1回は本籍を変えています。
私の父の場合は間に戦争があったこともあり、8カ所にわたっていました。しかも古い本籍地は直前の謄本を取得して初めてわかるので、1カ所ずつ追いかけていくことになり、時間も取り寄せる費用もかかります。また1カ所当たり何通請求すればよいかは、被相続人の資産の金融機関等が何ヶ所にわたっているかにもよります。その場で謄本を返却してくれる銀行もあれば、1カ月も預かるところもあります。そのために最低各3通くらいは請求した方が良いでしょう。相続人が多くそれぞれが資産の相続手続きを行う場合は、それぞれ謄本一式が必要でしょう。
■年金の受け取り
年金は2カ月に1回支給されます。しかも最初の支給は資格取得から数ヶ月遅れます。従って亡くなった時には、まだその時点での支給されるべき年金で支給されていない分があります。その分を相続する人が手続きして取得します。
■相続財産の取得
遺産相続協議書に沿って、各自相続の手続きを行い、相続税が発生するようであれば、各自分担金額を支払います。手続きに税理士、司法書士、弁護士等に依頼した場合は、その分の費用が発生します。
家族葬だからといって、単純に費用が少なくなるというわけでもありません。本人と家族の気持ちに添った葬儀となるようにあらかじめ話し合っておけば、費用の予測もつき、いざというときにあわてなくても済みます。
<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
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