オーストラリアの航空関連民間シンクタンクであるCAPAは6月7~8日、千葉県成田市にてアジア地区をはじめとするLCC各社のトップマネージメント層が一同に会す「CAPA LCCs in North Asia Summit」を実施。その初日となった7日には、成田空港に就航するLCCのピーチ・アビエーション、バニラ・エア、ジェットスター・ジャパン、春秋航空日本が「今後の日本LCCの行方」をテーマに、各社が目指すLCCについてパネルディスカッションを行った。

左から、バニラ・エア 企画部兼経営戦略グループシニアマネージャーの山室美緒子氏、アマデウスITグループ VPのCyril Tetaz氏、ピーチ・アビエーション COOの森健明氏、ジェットスター・ジャパン 会長の片岡優氏、春秋航空日本 会長のWang Wei氏、東京工業大学 准教授の花岡伸也氏

成田のLCC就航割合を30%に

同会議は成田国際空港(NAA)がメインスポンサーとなり、LCC各社および空港間の交流を深めることで、両者のさらなる発展を目指して実施されたもの。成田空港では2012年7月に日本LCCが就航し、2015年4月にはLCC各社が入居するLCC専用の第3ターミナルビルをオープンさせた。NAAは2016~2018年度中期経営計画において、LCC就航割合を現状の約25%から30%を目標に掲げており、同会議の開催を通じて北東アジア地区のLCCマーケットの拡大を目指している。

日本LCC4社が集ったパネルディスカッションには、ピーチ・アビエーション(以下、P)から森健明COO、バニラ・エア(以下、V)から山室美緒子企画部兼経営戦略グループシニアマネージャー、ジェットスター・ジャパン(以下、J)から片岡優会長、春秋航空日本(以下、S)からWang Wei会長が登壇。モデラーは東京工業大学の花岡伸也准教授が担った。以下はそのディスカッションをレポートする。

会の冒頭では成田国際空港の夏目誠社長より、第三滑走路の新設等、これから目指す成田の姿について発表された

質とコストのバランスのとり方

花岡氏: 日本でLCCを展開する中で、特に実感されることはどのようなことでしょうか?

P・森氏: 就航当初、高速バスが一番の競争相手と言われていましたが、高速バスはお年寄りの方がご利用いただくには辛いものがありますが、LCCならご利用いただけるのではないでしょうか。そうした考えもありますが、この伸び行く市場であるLCC市場では、競争よりも全体のキャパを増やすことの方が大事なのではと思っています。

V・山室氏: 何より、質がしっかり担保されなければいけません。そして、日本人はサービスにおいても高い質を求めています。安全を担保した上で質を高められれば、事業を拡大させることができると考えています。

S・Wang氏: 日本人特有の性格はあるとしても、中国でも韓国でも台湾でも同様に、人間ですので誰でも安くていいものを求めています。その一方で、日本人には「安かろう悪かろう」という認識があります。安くていいものを、それと同時に、品質・安全を担保するのが当たり前になっています。

春秋航空グループ全体を見てみると、47都市に旅行支店があり、2,000店舗越の旅行代理店を展開している。また、70以上の中国国内路線があり、年間1,000万人が利用している

花岡氏: 質を高く保つ一方でコストを守る、この考えは各社同じのようです。ですが、このバランスをとるのが難しいのが実情ではないでしょうか。実際、どうやってバランスをとっているのでしょうか?

P・森氏: LCCには限界がありますので、お客さまの期待がどこにあるのかをつかむのが大事になります。お客さまに求められているところにちょっとでも勝ることを目指しています。

J・片岡氏: 安全運航はベースとなるところですので、度外視することはないです。お客さまが求めるサービスとして、例えばスムーズなチェックイン等が挙げられると思いますが、そのための取り組みはしていきます。一方で、LCC専用の成田第3ターミナルビルに入居することでコストを下げます。その分、タラップを使った搭乗になる等の負担をお客さまに強いることにはなってしまいます。

S・Wang氏: CAの笑顔など、コストのかからないことを極めていくのがLCCのやり方ではないでしょうか。

V・山室氏: 小さなことではありますが、やれることはたくさんあります。サービスや日本ならではのおもてなしの精神は、必ずしもお金がかかることだけではありません。FSC(フルサービスキャリア)のおもてなしも同じです。おもてなしの精神を味わっていただく。それはFSCになんら劣るものではありません。