歯みがきで温床となる部分を除去することも重要だが、口腔内の乾燥も悪化の要因となるので、口呼吸ではなく鼻呼吸を心がけよう。他に血糖値が上がると歯肉炎が改善しないというデータもあり、間食をなるべく控えることも推奨されている。
思春期や妊娠期は歯肉炎になりやすい
つまるところ、口腔内をいつも清潔に保ち、プラークや歯石などのない状態をなるべく長く保つことが何よりの予防になるわけだ。だが今村医師は、特に歯肉炎になりやすい時期があると解説する。それは思春期と妊娠期だ。
「思春期や妊娠期はホルモンのバランスが変わって新陳代謝が激しくなり、細胞の活性が盛んにおこなわれます。そのような時期は、歯肉炎の原因となる菌に過剰に反応してしまいます。また、妊娠初期のつわりなどで吐くこともあるでしょうが、嘔吐(おうと)で口の中が酸性になって虫歯のリスクも上がってしまいます」。
つわりがつらくて歯みがきを簡単にすませてしまい、いつの間にか重度の歯周炎に移行してしまうケースも多くあるという。
さらに、妊娠期についてはおなかの中にいる子どもへの影響も懸念されている。歯肉炎が悪化した歯周炎を持つ患者における早産・低体重出産の出産リスクは、通常時の約3.6倍にもなるというデータや、歯周病菌が母体を通じて胎児にも感染してしまうという報告もある。どんなにつわりがつらくても、子どものためにはしっかり口腔内をきれいにしておきたいところだ。
「妊活のお気持ちがあるのであれば、その時点で口腔内の状態をよくしておくことが、お母さんの心構えのひとつだと思います。歯周病菌が一度でも口腔内に着床してしまうと、完治することはありません。お子さんへのリスクを考えると、妊活の前に口腔内のよい状況を維持できるように改善していくことが大切です」。
「ちょっと血が出たくらいだから」と軽く考えている人も少なくない歯肉炎。ところがそれを放置していると、水面下で静かに歯周炎へと進行して取り返しのつかない事態になりかねない。毎日の歯みがきで自分の口の中をしっかりと把握し、歯や歯茎からのサインを見逃さずに対処することが歯肉炎を寄せ付けない最善の方法といえるだろう。
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記事監修: 今村美穂(いまむら みほ)
M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長、MIHO歯科予防研究所 代表。日本歯科大学卒業、日本大学矯正科研修、DMACC大学(米アイオワ州)にて予防歯科プログラム作成のため渡米、研究を行う。1996年にDMACC大学卒業。日本矯正歯科学会認定医、日本成人矯正歯科学会認定医・専門医。研究内容は歯科予防・口腔機能と形態及び顎関節を含む口腔顔面の機能障害。MOSセミナー(歯科矯正セミナー、MFT口腔筋機能療法セミナー)主宰。