ワンピースタワーが奏功

東京タワーの下にある商業施設「フットタウン」では、3階の一部と4階・5階の全面を活用し、人気アニメ『ワンピース』をフィーチャーした常設施設「東京ワンピースタワー」を2015年にオープンした。「蝋人形館」の閉館などにより空いたスペースを大胆に使用し、海外でも人気のアニメと組んで仕掛けた新たな施設が、外国人旅行者を呼び込む新たな観光スポットとなっている。

芸能事務所アミューズ子会社のアミューズクエストが主体となって企画・運営している「東京ワンピースタワー」。人気アニメ『ワンピース』をテーマとするアトラクションやショーが売り物だ。日本電波塔はスペースを貸し、このテーマパークに一部出資も行っている。施設のスタッフによると、来場者の割合で外国人客が日本人客を上回る日もあるそうだ

東京タワーを使ったインバウンド対策も

インバウンド対策に注力する企業・団体にしてみれば、東京タワーは情報発信を行うのにうってつけの場所になりつつある。例えばビックカメラは、展望台チケットに裏面広告を打つことで、東京タワーを訪れる外国人を店舗に呼び込もうとしている。展望台チケットは、ビックカメラでの買い物の際、ポイント付与率をアップさせるクーポン券として使用できる。インバウンド対策に注力したい両社の思惑が合致して実現したビジネスモデルといえるだろう。

外国人旅行者による日本での買い物を後押しする一般社団法人のジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)は、東京タワーで年に2度、首都圏の買い物情報を外国人旅行者向けに発信するイベントを実施している。夏と冬に情報カウンターを設置し、東京で買い物を楽しむのに役立つ情報を発信する取り組みだ。

ビックカメラとのコラボレーションを知らせるポスター(写真左)。ビックカメラへのアクセスについて問い合わせを受け、東京タワーの職員が最寄店舗への道順を教えることもあるという。JSTOが年に2回設置する情報カウンター(写真右)では、外国人旅行者向けに首都圏の店舗情報などを提供する

海外からの観光客を呼び込みたい地方自治体にとっても、東京タワーは魅力的な場所に映るはずだ。東京タワーでイベントを開催する地方自治体はもともと多いが、今後はインバウンド対策をテーマとした催しが増えるかもしれない。4月からはウィラー・トラベルが東京タワーを発着地とする長距離バスの運行を開始している。このバスの到着地と東京タワーが、インバウンド対策のイベントで手を組む可能性も考えられる。

観光案内所としての施設づくりも選択肢の1つに

外国人旅行客の増加により、東京タワーは観光施設として新たな成長の可能性を示し始めている。収入の割合は現時点で、展望台チケットや直営土産物店の売り上げなどの観光収入が6割、テナントからの家賃収入や電波塔としての施設使用料などの不動産収入が4割という内訳だが、不動産収入が急に増えることは考えにくいため、今後の変動幅が大きいのは観光関連の部分ということになる。

観光収入を伸ばすのであれば、やはりインバウンド対策の充実が不可欠となる。海外での知名度と好立地により、外国人来塔者を順調に伸ばす東京タワーだが、東京観光のスタート地点という立ち位置を確立するためには、外国人旅行者が立ち寄りたくなるような施設づくりを今後も進めていく必要があるだろう。その立地と展望台をいかした発展の方向性として、例えば東京の観光情報や買い物情報などを更に充実させ、外国人旅行者向け観光案内所のような将来像を追求するのも有効な選択肢かもしれない。