国内旅行市場の維持・拡大が業界全体の課題に

観光庁によると、日本人国内旅行の延べ旅行者数は、ここ数年の間6億人台後半で推移している。2010年から2015年までの5年間を見た場合、最も多かったのが2011年の6億9,383万人。2015年は速報値で6億6,293万人だったため、国内旅行者は減少傾向にあると見ることもできる。航空会社と鉄道会社が、旅行者を食い合っている場合ではなくなりつつあるわけだ。

JALと鉄道会社も、外から見るほど厳しい競合関係にあるわけではない。JALの吉田氏によると、鉄道会社との協業案件は「実は結構ある」そう。例えばJR西日本とは、ロサンゼルス~京都間で航空機と鉄道のチケットを一括販売するビジネスを手掛けたり、大阪~九州間で片道新幹線、片道航空機の旅行商品を展開したりした実績がある。

航空会社と鉄道会社、手を組みやすい時代に?

協業の実績を知れば、北海道旅行でJALとJR東日本が組んだのも驚くにはあたらないが、今回の旅行商品を大々的に打ち出したことで、「(様々な業種との提携を)改めてアピールする機会になったと思う」と鈴木氏は語る。国内旅行市場を共に盛り上げていくうえで、いつまでも競合関係と見られたくないというのが両社に共通する想いなのかもしれない。

鉄道と航空機を組み合わせることで開拓できる商機については、「大いにありそう」というのが鈴木氏の見立てだ。JR東日本と組んだ今回の旅行商品は、2016年9月30日の帰着分で販売終了の予定となっているが、評判がよければ期間の延長もありうるという。3月の発売から現在までの手応えは上々の様子。冬季はウィンタースポーツの旅行客が見込めるため、この旅行商品が継続となる可能性も十分にある。

新幹線開業やインバウンドの急拡大など、大きなムーブメントが起こるときにはJALと鉄道会社の協業機運も高まる。東京オリンピック、北海道新幹線の札幌延伸、北陸新幹線の福井延伸など、将来のイベントでJALと鉄道会社がどのような協業を行うか。共同で戦略を練る土壌は整いつつあるようにみえる。

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