首都圏~函館間は距離が絶妙

今回の旅行商品が成立した背景としては、首都圏と函館の距離が丁度よかったことも見逃せないポイントだ。この区間は新幹線で最速4時間2分の距離。いわゆる「4時間の壁」が立ちはだかるため、一般的にいえば空路が有利な区間となる。

例えば東京から新幹線で2時間28分の金沢旅行を考えた場合、JALが片道航空機、片道新幹線の旅行商品を提案したとしても、鉄道会社側にしてみれば受け入れる理由が見出しづらい。この距離であれば、空港までの移動や航空機の待機時間などを考慮し、新幹線を選ぶ旅行客が増える傾向にある。鉄道会社にしてみれば、わざわざ片道を航空機に割り当てる必要がないわけだ。一方で首都圏~函館は、北海道新幹線が開業しても航空機に時間的優位性の残る絶妙な距離。鉄道会社が片道航空機の旅行商品を作る動機は十分といえる。

距離的には有利な立場のJAL、JRと組んだ狙いは?

「4時間の壁」の関係で不利な立場にあるJR東日本が、JALを巻き込んで今回の旅行商品を作る理由は分かりやすい。一方、首都圏~函館間では有利な立場にあるJALが、自らJR東日本に声を掛けて、この旅行商品を企画した動機については分かりづらい部分がある。JALの狙いはどのあたりにあるのだろうか。

「今回の商品で選択肢を増やし、旅行需要の創出と多様な顧客ニーズへの対応を図りたい」。JAL国内旅客販売推進部国内業務グループのアシスタントマネジャーである鈴木亮介氏は、今回の旅行商品を作ったことにより、青森、函館、ひいては北海道全体を絡めた旅行商品のメニューを拡充できたことに意義があると語った。

JALによると、首都圏~函館間および首都圏~青森間の航空便は、まだまだ航空需要の創出が見込める路線だ。今回の旅行商品は個人旅行者向けとなっているため、少しの空席でも有効活用できる点はJALにとっても都合がいいのだろう。

リピーター獲得も狙いの1つ

JALの狙いとして、メニュー拡充と航空需要の創出以外で思いつくのがリピーターの獲得だ。4時間の壁を考えた場合、北海道新幹線に一度は乗ってみたいと考える旅行客でも、函館を再訪する際には航空機を利用する可能性が高い。今回の旅行商品で函館・青森を訪れ、もう一度同地を訪問したいと考える旅行者は、JALにとっての潜在的なリピーターとなる。

JALの鈴木氏(写真左)と吉田氏

この狙いについてJALの吉田氏に尋ねると、「結果的にそういった効果もあるかもしれない」と一部は認めつつも、JRと組んだ最大の理由は、旅行業界が抱える共通の課題に対処したいがためだと強調した。その課題とは、人口減少による国内旅行市場の縮小だ。