「保育園ふやし隊@杉並」のメンバーに今の思いを聞いた

子どもを認可保育所へ入所させるための活動、いわゆる「保活」の当事者が「保育園落ちた日本死ね」と叫んだブログが話題となっている。しかし、入所を果たせなかった親たちが怒りややるせなさを感じるのは、今に始まったことではない。保育園を増やしてもらうための活動「保育園一揆」を実施した親たちの団体「保育園ふやし隊@杉並」の広報を務め、自身も過去、保活に取り組んでいた中楯めぐみさんに、現在の活動や感じている課題について聞いた。

ショックで胸が詰まる思い

東京都杉並区の待機児童問題に取り組む親たちの集まり「保育園ふやし隊@杉並」。2013年に結成され、保育園を増やしてほしいという願いから区への異議申立てや、抗議活動などを行ってきた。その結果、行政の対応は変化しつつある。中楯さんによれば「保育園が増えた実感はある」とのこと。さらに、認証保育所の空き情報などが確認できるポータルサイト「保育ホッとナビ」や、親たちの相談にあたる「保育コンシェルジュ」も設置され、自治体の努力が感じられるという。

しかし一方で、入所希望者の数も年々増加している。平成28年4月入所(第1次募集)の結果をみると、同区では入所を希望する3,797人に対して、入所可能数が1,943人。現状として約2,000人の子どもについて認可保育所への入所がかなっていない。中楯さんは、「ショックでした。胸が詰まる思いです」と話した。

さらに課題としてあがっているのが「3歳の壁」問題だ。同区では待機児童解消のため、0~2歳児までの子どもを保育する小規模保育所などの増設に力を入れてきた。しかし3歳から新たに認可保育所を探さなければならず、親たちは再び「保活」に取り組むことになる。「入所希望者が増えて、0~2歳児を受け入れられる施設を取りあえずつくるというのは、場当たり的な対応。それで助かる人もいるのは事実ですが、長期的な視野までは持てていないと感じる」とのことだ。

みんな怒っている

毎年2月と5月に行ってきた、行政に対する集団での異議申立て。中楯さんによれば、2月は準備が足りず実施しないとのことだったが、今年も4月末以降に行う予定だという(平成28年度から異議申立ては審査請求に一元化)。メンバーを行動へと突き動かしているのは何なのか。それは、保活当事者の「怒り」だった。

同団体は2月、保活当事者に対してアンケート調査を実施。意見を求める設問の回答には、入所内定をもらえなかった親たちの怒りや、行政に対する痛烈な批判がこめられている。「普通に子どもをうんで働き続けることがこんなにも苦しい状況は間違っている」「女性が輝ける国に! と掲げた目標とは到底離れている現実がある」「これでは少子化が進むのも当たり前」「保活がつらくて心身ともに休まらず、子育てに専念できない」などだ。さらにこのうち約50人が「異議申立てをしたい」という意思を表明した。

中楯さんは、「集団で行うことで、"これだけの人が保育所を増やしてほしいと思っている"ということを伝えたいのだと思う」と語った。「意思表示をしたところで、自分の子どもを認可保育所に入れられるわけではない。しかし、自分が抱えた気持ちを他の人に味わってほしくない、第2子、第3子の時には状況が好転してほしいと願う親が多いと感じる」という。

当事者が変わっていく難しさ

今年で4年目に入った同団体の活動。今後も続けていきたいという思いがある一方、運営を難しくさせているのは「当事者が変わっていくこと」だ。過去行った異議申立ての活動に関しても、5月の参加者は2月の4分の1ほど。認証保育所などに内定が決まり、入所準備が忙しくなったり、怒りが収まったりといった参加者が出てくることが背景にあるという。「喉元過ぎると忘れてしまうというか、忘れたいと思うくらい、保活って大変なのだとあらためて感じています」と中楯さん。保育所不足の問題は根深く、活動にはエネルギーがいる。育休中には動けても、仕事が始まると参加が難しくなっていくというのが現状だ。

活動に参加したり、アンケートで声をあげたりする親たちは、数としては多くないかもしれない。しかし休む間もなく育児と仕事に奔走する親たちの状況を考えれば、その数は保育の現状に怒りを感じる親のうちの氷山の一角にすぎない。活動の背景にある多くの親たちの怒りを、行政は受け止めるべきだ。