日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部・感覚器科学分野の大久保公裕教授

東京都健康安全研究センターはこのほど、東京都内にて「第10回 花粉症予防・治療シンポジウム」を開催。日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部・感覚器科学分野の大久保公裕教授が「花粉症予防と対策及び治療に関する最新の話題」との題で講演した。

30~50代だけで1,200万人の患者

大久保教授はまず、スギ花粉症有病率について説明。スギのアレルギーに悩む人は増加しており、全国平均で26.5%もいるというデータもある。さらに花粉の有病率を1998年と2008年で比較すると、ほぼすべての年代で患者が増えているという。

「花粉症は低年齢で発症しやすくなっており、高齢になっても花粉症の症状が残るというのが今の有病率の状況です。スギ・ヒノキの花粉症は30代、40代、50代にピークが来ますが、『総務省人口推計月報』の数値に有病率を掛け合わせると、この世代だけでスギ花粉は1,200万人もいると考えられます」。

もはや「国民病」とも呼べる花粉症の対策として最も簡単に挙げられるのが、「抗原の除去と回避」だ。

■花粉情報に注意を払う
■飛散の多いときの外出を控える
■飛散の多いときは外出時にマスクやめがねを着用する
■帰宅時は衣服や髪をよく払ってから入室する
■部屋の四隅など、花粉がたまりやすい場所の掃除を励行する。

これらの行動を日ごろから意識的にしておくだけで、アレルギーのつらさを一定量は低減させることが可能だ。当たり前のことかもしれないが、意外とできていない項目がある人もいるだろうから、まずはこれらの行動を実践してほしい。

短いシーズンも、積み重ねれば膨大な年月に

一方で、治療法として考えられるのが薬物療法。花粉症は毎年、一定の期間しか患者を苦しめないため、薬で目のかゆみや鼻水、鼻づまりなどの症状を緩和させている人も多いはずだ。だが、毎年の積み重ねは膨大な薬量と金額につながる。

例えば、5歳で花粉症を発症し、65歳まで症状が続いたと仮定しよう。スギ花粉ならば、一般的に飛散量が多いのは2~4月だ。その3カ月間、毎日薬を使用したと考えると、60年間の4分の1にあたる15年間も薬に投資する生活をしている計算になる。考えただけでも恐ろしい数字だ。

そこで近年、花粉症の根本的解決を目指す治療法として「免疫療法(減感作療法)」が知られるようになってきた。対症療法の薬物療法とは異なり、免疫療法は"治癒"が期待できる治療法で、中でも「舌下免疫療法」が注目を浴びている。