今、注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていくインタビューの連載企画「テレビ屋の声」。

第2回の"テレビ屋"は、TBSテレビのバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』の演出を手掛ける、同局の藤井健太郎氏。同番組は、MCダウンタウンの松本人志が、最近の番組の中で「唯一チャレンジしている」(フジテレビ系『ワイドナショー』2015年2月8日放送より)と評するほどで、ほかにも藤井氏が手掛ける『クイズ☆タレント名鑑』などの番組は"攻めている"印象を持つ。しかし、本人は「むちゃしているつもりは全然ないんですけどね」と冷静に語る――。


TBS『水曜日のダウンタウン』演出・藤井健太郎氏

――入社してから、一貫してバラエティ番組のご担当ですか?

最初は情報番組を担当していました。『はなまるマーケット』で一度ADからディレクターに上がりましたが、入社3年目でバラエティに異動。ADとして『リンカーン』の立ち上げに参加しました。その後、『リンカーン』でディレクターとなり、『ひみつの嵐ちゃん!』や『さんまのSUPERからくりTV』を担当した後、30歳のときに『クイズ☆タレント名鑑』を立ち上げました。そこからは主に演出やプロデューサーという立場で番組制作に携わっています。

――そうすると、ダウンタウンさんとの出会いは『リンカーン』ですか?

そうですね。ただ、当時はいちディレクターだったので、ご本人たちにはあまり認識していただいていないとは思いますが。

――『水曜日のダウンタウン』では、演出を担当されていますが、業務の範囲はどのような内容ですか?

番組の企画や演出に関する責任者です。恐らく他の番組の演出担当よりも、僕は自分で細かい部分までやってしまうことが多いので、企画や構成はもちろん、ナレーションは自分で書きますし、最終的な編集も全て自分で行っています。

――番組制作のスケジュールは、どのようになっていますか?

スタジオ収録が隔週土曜日なので、その週の頭くらいから担当のディレクターたちが作ったVTRをチェックしていきます。1回目で大ざっぱな直しを伝えて、2回目で細かい直し、それからナレーションを書いて、微調整しながら最終的な形に仕上げていくという感じです。その後、スタジオ収録した素材を、OA前週の木曜か金曜に放送尺に合わせて編集し、土日でテロップ入れや映像の加工作業。月曜にナレーション録り、音付け、音のミックスを行って、水曜日の放送を迎えます。

――番組の柱である「説」というワードが出てきたのは、どのような経緯でしょうか。

ダウンダウンさんとの打ち合わせの中で、「誰かが何かのプレゼンを行う」というフォーマットが決まりました。ここに、軸として「説」というワードがあれば、真面目なネタからバカバカしいネタまで幅広く扱えるなと考えたことがまず一つ。それに「何かを発表する」だけでなく、「仮説があってそれに対して答えを出す」という形にした方が番組として展開させやすいというのがもう一つです。あとは、番組自体がシンプルな構成なので「説」というワードが番組のカラーになればと思って採用しました。

『水曜日のダウンタウン』(TBS系 毎週水曜21:56~22:54 ※全国ネットは22:00~)
芸能人や視聴者の提唱する「説」を検証していくバラエティ番組。「説」と呼びながら「ポール・マッカートニー、知らない人が見たらおばあさん説」など、学会で発表されるような内容ではないが、2015年7月15日に放送された「徳川慶喜を生で見たことがある人ギリまだこの世にいる説」は、ギャラクシー賞の月間賞を受賞した。MCはダウンタウン。
(C)TBS