世界銀行に「世界でも労働制度に制限の多い国」と懸念されるほど、労働者寄りといわれるペルーの労働法。あまりにも労働者保護の色合いが強いため、企業は容易に正社員を増やすことができないといわれる。労働者の権利をとことん守ろうとするペルーの労働法とはどんなものなのか。今回は「有給休暇」と「病欠」に焦点を当て紹介していこう。

南半球のペルーは、これからがバカンスシーズン。有給は労働者にとって当然の権利であり、「有給をとって申し訳ない」という後ろめたさや、「休まれて迷惑だ」といった同僚のやっかみはなく、お互いさまという感じ。

「有給は当然の権利!」年間30日もあるペルーの有給休暇

ペルーの有給休暇は、入社2年目から30日もらえる。有給取得は「十分な休息で身体を休め、労働のストレスを解消するための行為」とされ、最低でも連続7日間(日・祝祭日を含む)取得しなければならない。一方、有給消化率の低さで有名な日本では、2016年4月から年5日間の有給消化がようやく義務化される予定。残念ながら、続けて取得する決まりはない。

ペルーでは未消化分の有給休暇を翌年へ繰り越すことができ、繰り越した有給は何年たっても失効することがない。例えば、入社後3年間一度も有給を取得しなかった社員が、4年目の有給と未消化分を合わせて3カ月のバカンスに出かけるのも可能。さらに、有給が翌年に繰り越された時点で、企業は給与以外に未消化分の有給相当額を支払う必要があるが、驚くことに、この場合も繰り越された有給は消滅しないのだ。「有給を使わずよく働いた者に対しては、等価分の賃金を臨時ボーナスとして与えよ」というわけである。有給の買い取りすら違法とする日本とは、雲泥の差だ。

もちろん企業側も、こうした事態にならないよう、社員に対して積極的に有給休暇を消化するよう働きかける。有給休暇の取得は労使双方の合意が前提だが、合意に至らなかった場合は、企業側の時季指定権が優先される。メーカーやサービス業など多くの従業員を抱える企業では、全社員の有給取得スケジュールを作成し、段階的に休みを取らせるところも少なくない。社員に休みを強制することになるが、有給を確実に取得させるためにはやむを得ない措置だろう。ただし双方が予め合意すれば、年間30日の有給を半分買い上げ、15日に短縮することもできる。