落合氏:でも、『G-レコ』を見た世代が宇宙に出ようとしてくれるから大丈夫じゃないですか?

富野監督:宇宙に出たいって思う? 僕は『ガンダム』を作っていた時から宇宙に出たいと思ったことはありません。だって、つまらないから。僕は星座を見て1年中楽しめるという感覚がないから、きっと飽きるし。僕は、そばにお姉さんがいてくれたほうがずっといい(笑)。それ以上の欲がないですから。

でもこれに関連すると、生物というのは雄と雌に分化されて今日まで生きてきて、人類は繁栄してきた。だけど、人類という一種のみがこれだけ繁栄してきてしまった地球の生態系は異常なんだということを、我々はやばいと思う必要があるという話までしたいんだけど、これはアニメではできないんです。視聴率も下がるし、劇場にも誰も見に来てくれないということになるので、スペクタクルに展開させるしかないんですよね。

落合氏:コンピューターって、1秒間に3ギガ回くらい計算できるんですけど、人間って種としては子供を作る時しか計算してないんですよ。DNAってワンクリックしてやっと1回演算だから、20年で1回くらいしか計算していないのと一緒ですからね。そう考えるとコンピューター以降の人類はよっぽど情報を整えているし計算している気がします。

富野監督:人類は高等動物だという表現をしているけど、高等動物がこんなレベルなんです。今のパソコンに追いついていないんですよ。そういうことを、もう少し個人の問題として、組織の問題として理解して、実際の施策をするという頭をそろそろ本気になって考えなくちゃならないというのが21世紀なのではないか。そして、そういうものをコンピューター的な技術論からも一般に広げていくというものを、子供たちに向けてやっていかなければ理解は得られないと思いますね。

落合氏:僕は、バラエティ番組とかに出る機会はとても大事にしているんです。どうやったら14歳の子供に語りかけることができるかといったら、今"映像の世紀"のいいタイミングなので、このタイミングで言っておかないとマスに言えるチャンスはなくなってしまいますから。

富野監督:"映像の世紀"は引きずってはいます。ただ、テレビのブラウン管とかVTRとか、かつては元フィルムだったものでメディアに変換することができたけれども、今それをもっと新しい言い方をしなくちゃいけないと思っています。動画という言い方もありますが、「YouTubeに載る」というと動画という意味でしょう。僕は、表現として「YouTubeに載る」という言い方を認めたくないんです。どうしてかというと、載った瞬間に自分の作品がYouTubeに吸収されちゃって、YouTubeが作ったかのような錯覚を勝手に起こさせるでしょう。そんな馬鹿なことを誰がさせるかという話をしたい時に、動画的なもの・動画作品を指す、もっと新しい表現を発明しなくちゃいけないという話をさっきもしていたんです。