仕事でも何でも環境を替えれば心理的な変化が起こるもの。子供のころのクラス替え、席替えはもちろん、自宅の模様替えをすると、いつもの風景に新鮮さが出てくる。
職場でも、組織変更に応じて、あるいは社内の空気を一新するためにレイアウト変更をすることがあるだろう。しかし、ただの模様替えではなく、社員が楽しく意欲的に業務に取り組み、、よりイノベーションの機運が高まる「戦略的レイアウト」づくりに、社員が中心となって取り組んだ企業がある。ジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマー カンパニーだ。
社長変更にともないポリシーを更新
コンシューマー カンパニーは、絆創膏「BAND-AID(バンドエイド)」、薬用マウスウォッシュ「LISTERINE(リステリン)」という人気商品を筆頭に、一般消費者に近いところでヘルスケア関連の製品の販売やサービスの提供を行っている。
昨年11月1日には社長が交代し、マリオ・スタイン代表取締役プレジデントが就任。新しいトップの着任とともに、新たな中長期的なビジョンや戦略を策定する中で、社内のカルチャーをよりイノベーションを指向したものに変えることが、取り組むべき優先事項のひとつとして挙げられていた。その中には、B to Cのビジネスをメインに行っている同社は、絶えず変わりゆく消費者の心をとらえた製品開発やマーケティング活動を行うため、専門性を持った社員同士が部門の垣根を越えて気軽に議論をし、ボトムアップでいろいろな意見を出し合える環境と文化が重要だという思いがあった。
J&Jの海外オフィスの成功事例なども踏まえながら新社長が打ち出したのは、「社内の文化を変えるため、まず社員が日々過ごす職場環境を変えよう」というアイデアで、ここから同社のオフィス改革もスタートしたのである。
物理的隔たりがコミュニケーションを阻害
旧オフィス最大の課題は、ビジネスの幹であり、社内で最も大きな組織である営業とそのほかの部門に、社内レイアウト上の物理的な隔たりがあったことだ。人数の多い営業職はどうしても同じフロアに収まりきらず、マーケティングやバックオフィス部門とは別階にオフィスを構えていたという。
同社のオフィスの変革プロジェクト「OFFICE-AID」のプロジェクトリーダーを務めた鈴木俊幸さんが、当時の社内の様子を振り返って語ってくれた。
鈴木さん「正直なところ以前は営業現場とマーケティングを始めとする関連部門が密接に連携していたとは言えなかったですね。営業部門が別フロアなので会議室以外で顔を合わせる機会があまりなく、有意義な雑談が生まれにくい状況でした。オフィスを見回してもガラスにスモークを貼った会議室に遮られて開放感に乏しく、どちらを見ても青とグレーの空間には閉塞感を感じる人もいたようです」
鈴木さん「イノベーティブなオフィス環境でないという新社長の指摘は私自身も同感できるものであったため、同じ意見を持つ社員を募ってこの機会に変化を起こそう、とオフィス環境改善プロジェクトの推進役を引き受けました。限られた時間とリソースという不安はあったものの、ボトムアップで現状を変えたいと思う社員は社内にきっといると感じていました。」
チーム「OFFICE-AID(オフィスエイド)」の設立
何人集まるか不安もあった中、呼び掛けに答えて20名もの社員が集まりプロジェクトは2014年の年末にスタートをきった。プロジェクト名は、自社商品である「BAND-AID」をもじった「OFFICE-AID(オフィスエイド)」であり、これもメンバーの発案で決定した。
OFFICE-AIDのメンバーは社歴も職位も仕事内容もバラバラだったが、1名を除きオフィス作りの素人であることは共通していた。ただし応募の条件である「なぜオフィス環境を変える活動に参加したいのか?」という問い掛けにしっかりとした思いを書いたメンバーであるだけに、より良いオフィスの実現にむけて本当に意欲の高い人たちが集まることになったという。