災害に事件や事故、誰もが直面したくないそんな時に頼りになるのは、消防官や警察官、自衛官などだろう。実は、彼らが所属する機関には一般人でも気軽に見学できるものや、リアルな体験コースを受けられる施設がある。今回はそんな、無料で見学できる東京都内の政府機関4選を紹介しよう。

気象庁で津波や竜巻の仕組みを知る

災害を気象科学の視点から学んでみたい人は、気象庁の1階にある「気象庁気象科学館」(千代田区)に行ってみよう。ここでは気象庁でどんなことが行われているかや、自然災害の原理などを展示や体験で知ることができる。どうやって災害が起きるかを理解しつつ、そこからの対処法を学ぼうというコンセプトだ。

「気象庁気象科学館」内には「津波シミュレーター」も (c)Flickr/Junya Ogura

「津波シミュレーター」や「竜巻発生装置」を使えば、模擬的に波や竜巻を起こすことができる。また、「緊急地震速報トライアル」「ひょっとして大雨キューブ」では、災害時にどのような行動をすべきかを学べるようになっている。これらは予約なしで見学できるため、ふらりと立ち寄ってみてもいいだろう。

そのほか、5~15人の団体であれば、予約制で気象庁の仕事現場の見学も行っている。これは、天気予報の作成や地震火山を監視する現場を職員の解説付きで見ることができるようになっている。なお見学は、台風・地震・噴火などが起こった時はキャンセルとなる場合がある。あらためて、ここが災害との真剣勝負の場であるということが分かるだろう。

アクセスは東京メトロ「竹橋駅」、もしくは「大手町駅」より徒歩1~5分となる。

消防庁で地震や暴風雨体験も

災害が起きた時、慌てずに行動できるかどうか。それが身を守るためのひとつの鍵となる。そんな「もしもの時のため」の模擬災害を一通り体験できる施設が「東京消防庁本所防災館」(墨田区)だ。

「東京消防庁本所防災館」では体感しながら災害時の対策が学べる(写真はイメージ)

ここには1階から4階まで、フロアごとに地震、都市型水害、暴風雨、火災の煙、そして応急手当までを体験できるコーナーが設けられている。人口的に起こした暴風雨の中を実際に歩いてみたり、洪水で水圧がかかったドアを押し開けてみたりなどの体験で思いもしなかった発見があるかもしれない。

映画館のような形の「防災シアター」では音響や映像、座席の振動により、よりリアルな災害を体感できる。ニュースで見るだけでは分からない実際の感覚を知ることができるだろう。防災体験はインストラクターが案内するツアーとなっているため、電話予約をしてから訪れよう。アクセスは各線「錦糸町駅」もしくは「押上駅」より徒歩10分となる。

同様の施設として「池袋防災館」(豊島区)、「立川防災館」(立川市)、「北区防災センター(地震の科学館)」(北区)があり、それぞれ災害体験を実施している。池袋防災館では12:00~12:30に地震体験を予約なしで開放しているそう。昼休みのちょっとした時間に地震の心構えが学べるというわけだ。

警視庁で庁の仕事と事件資料に触れる

警察署というと近寄りがたい印象があるだろうが、東京全体の警察署を統括している「警視庁本部」(千代田区)には、意外にも充実した見学コースがある。平日限定ではあるものの、1日に4回もツアーが行われているのだ。

「警視庁本部」は皇居のお堀に接している

まずは「ふれあいひろば警視庁教室」で警視庁の仕事についてのビデオを鑑賞。それから「警察参考室」という大変固いネーミングの資料室を見学しよう。ここには過去に起こった事件の資料が約1,000点展示されている。昔の事件で使用された刀などもあり、捜査の長い歴史を垣間見るようでなかなか楽しめるだろう。

次に訪れるのは見学のメイン「通信指令センター」。ここは実際に東京23区内の110番通報を受けている場所で、パトカーや警察官に事件現場へ向かう指令も出している。見学中にもそういった場面が見られるかもしれない。

見学には電話予約が必要。アクセスは東京メトロ「桜田門駅」、もしくは「霞ヶ関駅」より徒歩1~2分となる。

防衛省で自衛隊の仕事を知る

台風18号北関東豪雨災害でも災害派遣で活躍した自衛隊。その本省である「防衛省市ヶ谷地区」(新宿区)にも見学ツアーがあることをご存知だろうか。

「防衛省市ヶ谷地区」には第二次世界大戦時の写真や軍服、刀なども展示されている (c)Flickr/くーさん

このツアーでは、庁舎や「市ヶ谷記念館」「屋外ヘリ展示場」「広報展示室」などを見学する。市ヶ谷記念館は昭和9年(1934)に建てられたという陸軍士官学校の大講堂が移設・復元されたもので、当時の雰囲気をそのまま残した館内には第二次世界大戦時の写真や軍服、刀などが展示されている。

ツアーは予約制で平日のみ。警備の都合上、入場には必ず身分証の提示をしなければならない。また、ツアーの途中で帰ることもできない。その厳重さを見ると、国の防衛をつかさどる機関なのだということが分かるだろう。アクセスは各線「市ヶ谷駅」もしくは「四ッ谷駅」より徒歩10分となる。

また、東京ではないが、日本各地の自衛隊基地では様々なイベントが行われている。11月3日には埼玉県の入間基地での航空ショーが行われるほか、毎年1回、熊本、千歳、舞鶴などの基地で「女性のための自衛隊1日見学」として、女性限定の訓練体験や基地内での食事など、自衛隊員気分を楽しむことができる。開催情報はウェブサイトでチェックしよう。


誰の身にも起こる可能性のある災害や事故。これらの見学は、その対処法やそこで活動する人々の仕事を身近に、しかも楽しみながら知ることができるものばかり。次のお出かけやデートプランにしてみてはいかがだろうか。

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。