俳優の本木雅弘が、2008年の『おくりびと』以来、7年ぶりに映画主演を務める。第153回直木賞候補作にノミネートされた書き下ろし小説『永い言い訳』を原作に、同作を執筆した西川美和監督自ら来年秋公開に向けて映画化する。

映画『永い言い訳』に出演する本木雅弘(左)、竹原ピストル(右上)、深津絵里(右下)

本作の主人公は、長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓こと衣笠幸夫。夏子との間にすでに愛情はなかったために悲しみを演じることしかできなかったが、ある日、同じ事故で亡くなった夏子の親友の遺族と出会う。人と人の"別れと出会い"を通して、「突如、家族を失った者たちはどのように人生を取り戻すのか」を投げかける。

幸夫を演じる本木は、自ら企画し第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞するなど大ヒットを記録した『おくりびと』(2008年)以来、7年ぶりの映画主演。西川監督の小説と脚本、幸夫のキャラクターに「自分のようだ」とほれ込み、出演を快諾した。また、「女性監督にお世話になるのは初めてですが、すでに春編、夏編の撮影を終え、監督の的確な指示に答えるべく鞭打たれた興奮から抜けられず、少しの毒と、温かみのある西川演出にハマっています」と、監督との相性も抜群のようだ。

幸夫同様に、事故で妻を亡くしたトラック運転手の陽一役は、元野狐禅で現在はソロアーティストや俳優としても活動している竹原ピストル。竹原は、「映画出演に、あくまで、挑んでいる身ですから、現時点でももちろん、諸々思うことはありつつも、無事に撮影を終え、無事に作品が完成するまで、何を述べる気にもなれません、申し訳ありません」としつつも、「本木雅弘さんのお気遣い、思い遣りに支えていただきつつ、少しでも西川監督のイメージに近い動きができるよう、全力で取り組んでいる」「及ばぬところは多々あると思っておりますが、西川監督への忠誠と、この作品への愛着だけは、誰に劣ることはなく、とは思っております」と真摯に語った。

バス事故でなくなる幸夫の妻・夏子を演じるのは深津絵里。本木との共演は1995年のフジテレビ系ドラマ『最高の片想い WHITE LOVE STORY』以来、21年ぶりとなる。さらに、陽一の子ども・真平と灯役を、オーディションで選ばれた藤田健心と白鳥玉季がそれぞれ務め、妻のゆき役を堀内敬子が演じる。

原案・脚本を一手に担った西川監督は「これまでオリジナルで映画を作るときは、いつもはじめに脚本というかたちで物語を組み立ててきましたが、(本作は)予算や時間の制約、という映画的な課題をいったん据え置いて、先に小説というかたちで自由に物語を作ってみることにしました。そうすることで『豊かな無駄』をゆっくりと熟成し、登場人物や物語を練り込む時間が取れたと思います」と回想。また、「小説は私の持ちうる言葉の限りで多くを語っていますが、こんどは言葉では語り得ないものをいかにスクリーンに映し出すかが第二の挑戦になりそうです」と意気込み、「小説とは展開も設定も違えた部分がいくつもあります。私が原作者なので、それはもうやりたい放題です(笑)」「長きにわたる撮影ですが、キャスト、スタッフとともにあたらしい映画を探し求めて行きたいと思います」とコメントを寄せた。

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