治療法は?

病院では、主に次の治療法がとられます。手術と薬物治療など複数の方法を組み合わせ、段階的な治療を行うことも。いずれにしても、適応を調べたうえで、最適な治療法を選択することになります。

生活改善指導

アレルゲン対策(ダニの排除など)を指導します。

薬物療法

抗アレルギー作用のある飲み薬(「抗ヒスタミン薬」など)や鼻スプレーなどを処方します。

レーザー治療

鼻の粘膜をレーザーで焼灼する治療法。比較的安価で出血や痛みはないものの、効果や期間が限定的なこともあります。

特異的免役療法

少量のアレルゲンを繰り返し体内に注入することで体に慣れさせる方法で、皮下に注射する「皮下免役療法(注射法)」のほか、舌の下に投与する「舌下免役療法」(スギ花粉症の治療法として2014年より保険適用)があります。いずれも効果を出すためには、3年以上は継続する必要があるでしょう。また、皮下免役療法の場合、注射後15分前後で「アナフィラキシーショック」という副作用がごくまれに起こることがあります。症状には、じんましん、呼吸困難、下痢、血圧低下などがあり、場合によっては死に至ることも。

手術

鼻の形状異常がある場合は、鼻の粘膜の腫れや骨を切除する手術などを行います。主に頑固な鼻づまりに対する鼻腔通気を改善する手術ですが、鼻水過多に対する手術もあります。

本当に魔法の注射!? 「筋肉注射」が推奨できない理由

通年性アレルギー性鼻炎の原因の一つにハウスダストが挙げられる

一部では、ステロイドの筋肉注射をする人もいるようです。アレルギー性鼻炎はアレルゲンを吸い込んだときに異物と判断することから起こると解説しましたが、筋肉注射をすると異物に反応しなくなるため、著効例も多く一定期間効果が持続します。

しかし、これは非常に危険な治療法です。筋肉注射によって、ウイルスや細菌などの病原微生物に抵抗する力も抑制されてしまい、全身に重大な副作用が生じる場合があるからです。副作用の一例として、筋肉が萎縮してくぼみができ、元に戻らないことがあります。また、体の免疫に作用するので、体調不良や生理不順、感染症の悪化などさまざまな副作用が起こる危険性も。さらに、時間をかけて体内に吸収されるため効果は個人差が大きく、いったん副作用が出たら薬の効き目がなくなるまで長期間待つことになります。

通年性アレルギー性鼻炎の症状は、一年を通したものだからこそ、悪化すると日常生活にも支障をきたし、生活の質(Quality of Life)に関わるともいわれます。症状に心当たりがある人は我慢せず、医師に相談してみてください。そして、自分に合った治療法を見つけ、今までより上手に病気と付き合っていきましょう。

※画像と本文は関係ありません

記事監修: 松根彰志(まつね・しょうじ)


医学博士
1984年 鹿児島大学医学部医学科卒業
1988年 鹿児島大学大学院医学研究科修了
1988年~1990年 ピッツバーグ大学(アメリカ合衆国ペンシルバニア州)留学


NPO 花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会 副理事長、事務局長
同団体は、花粉症・アレルギー性鼻炎や蓄膿症・副鼻腔炎に正しく対処するための情報発信・活動を推進しています。


日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授
日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科部長、病院研究委員会委員長
日本耳鼻咽喉科学会、日本アレルギー学会、日本鼻科学会、日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 各学会の代議員
神奈川気道炎症病態研究会 代表幹事 など

<お知らせ>
日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科では、6月よりスギ花粉の舌下免役治療(新規分)を再開しました。