「天国にいちばん近い島」で見るアイドルとは

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「天国にいちばん近い島」に主演の原田知世(右)

84年に公開された映画。原作は1966年に出版された森村桂の旅行記で、ニューカレドニアを舞台にした心あたたまる物語が展開される。主演の原田知世はこのとき17歳。原田知世というと一般的には『セーラー服と機関銃』や『時をかける少女』なのだろうけど、実は両方ともよく知らなかったのだ。なので、筆者にとっては今回の『天国にいちばん近い島』が、80年代における原田知世ファーストインプレッションになる。ちなみに本作は、製作・角川春樹、監督・大林宣彦、脚本・剣持亘という「時をかける少女」の黄金トリオが再結集した作品でもある。

「透明感」の意味を理解できる原田知世の美しさ

本作の原田知世の第一印象は「メガネっ娘じゃん!」だった。そう、この作品の主役である万里は、無口で大人しいメガネっ娘なのだ。しかもかけている眼鏡は、お世辞にも可愛いとは言えない、黒縁のダサいやつである。まぁそんなのでも原田知世がかけるとそれなりになってしまうのがすごいところなのだけど、とにかく暗くて無口でメガネの原田知世が、ニューカレドニアでのたくさんの出会いを通して少しだけ大人になる過程が語られる映画なのだ。

しかし、若き日の原田知世は不思議な魅力に満ち溢れている。一言でいうと「透明感」だろうか。これまで「透明感」という言葉を聞くたびに、「なんだよ透明感って」と思ってきたのだが、本作の原田知世を見て「これかー!」と理解した。線が細く、華奢で繊細、ふさぎこんだ顔もいいけど、ニコッと笑うと表情が一気に出る。そのギャップも良い。青空と海に囲まれた楽園のようなニューカレドニアの雰囲気と、全体的に白っぽい衣装が、彼女のそんな透明感をブーストしている気がする。映画だし、アイドルなんだからいろいろ"作って"いるのだろうけど、それでこのナチュラルさはすごい。

80年代の海外旅行を疑似体験できる

で、そんなメガネっ娘の万里は、亡き父親が“天国にいちばん近い島”と呼んだ思い出の地、ニューカレドニアへ飛び、そこでいろいろな人と出会う。日系人の青年・タロウや偽ガイドの深谷有一、エッセイストの村田圭子……彼らと交流を深めるうちに、意外な事実が明らかになる。

そのあたりは実際にご覧いただくとして、今作の見どころの一つが、当時の海外旅行の雰囲気。当時はまだ海外旅行が今ほど一般的ではなく、ましてやニューカレドニアはメジャーな観光地ではなかった。そんな80年代における海外旅行ことの雰囲気を擬似的に味わえるのは、ちょっとおもしろい体験だった。逆にニューカレドニアを訪れたことがある人なら、まだフランスの植民地だった時代の現地の雰囲気と対比させて見るのも、面白い注目ポイントとも言えるだろう。

薬師丸ひろ子と原田知世。アイドル黄金期にトップクラスの人気を誇っていた二人は、いわばアイドルの中のアイドルだ。二つの作品をご覧いただければ、彼女らが当時の若者たちを熱狂させ、今なお熱い支持を得ている理由がよくわかるはず。理屈じゃない、見ればわかる! と声を大にして言いたい。ぜひ当時のアイドルのアツさを再確認してほしい。もちろん、放送前に特設サイトもチェックしてみよう!