WOWOWプライムにて、27日(土)から5日にわたり「特集:オレたちの映画[角川映画編]」が放送される。ピックアップ作品は『里見八犬伝』『二代目はクリスチャン』『ねらわれた学園』『愛情物語』『天国に一番近い島』の全5作品だ。いずれも80年代に大ヒットした角川映画であり、薬師丸ひろ子や原田知世など、当時を代表するアイドルが出演している。

1980年生まれの筆者にとって、80年代のアイドルはちょっと不思議な存在だ。神々しいというか、伝説的存在ですらある。というのも、筆者が思春期を迎えた90年代は、アイドルのイメージが変化した時代だったからだ。90年代で記憶に新しいアイドルといえば、筆者が印象深いのは97年デビューのモーニング娘。なのだけど、80年代のアイドルとは少し雰囲気が異なっている。

そう考えると、80年代のアイドルは、その時代だけの特別な存在だったようにも思う。いったい80年代アイドルの何がそんなに当時の若者を惹きつけたのか。角川映画から『里見八犬伝』『天国にいちばん近い島』の2作品をピックアップし、魅力に迫ってみたい。

「里見八犬伝」で振り返るアイドルとは

(C)KADOKAWA 1983
「里見八犬伝」主演の薬師丸ひろこ(左)

薬師丸ひろ子主演で1983年に公開された。タイトルでピンとくる人もいると思うが、本作は滝沢馬琴の名作「南総里見八犬伝」を下敷きに、鎌田敏夫が新たな解釈で描き直した伝奇小説「新・里見八犬伝」を「仁義なき戦い」の巨匠・深作欣二が映画化した作品だ。

そういった事情もあり、本作は原作の原作にあたる「南総里見八犬伝」とは似ても似つかない和風ファンタジーに仕上がっている。馬琴から引き継いだ要素といえば、各固有名詞と、伏姫から飛び散った8つの霊玉を持った八剣士(八"犬"士ですらないのだ!)が集まるという大枠くらいだろうか。あとはほぼオリジナルのストーリーとなっており、仮に当時ネットがあったなら、原作ファンの間で大いに物議をかもしたのではないかと思われる。

だが、意外(といったら失礼かもしれないが)にも、これが面白いのだ。現代から見ればチープな点は多々あれど、2時間以上の長時間にわたってまったく退屈せずに見ることができる。さすがは深作欣二である。

薬師丸ひろ子のロリフェイスに注目!

若き日の真田広之や志穂美悦子、京本政樹、千葉真一、萩原流行、夏木マリなどにも注目したいところだが、本作の魅力の大部分を占めるのは、主役である静姫役の薬師丸ひろ子。

驚かされるのは、そのロリフェイス。当時、薬師丸ひろ子は19歳のはずだが、とてもそうは思えない。丸くて大きくクリクリした目と、小ぶりな鼻と口、そして丸顔のせいだろうか。あどけない表情は年齢よりもはるかに幼く感じるのだ。さらに、声もかなり高めで、声優をやったらさぞ人気が出たんじゃないだろうかと思うような声質である。セクシーというよりは可愛い感じで、何とも庇護欲をかき立てられるのだ。ああ、これは当時の大きなお兄さんたちが熱狂したのもわかる。

それでいて、真田広之とのラブシーンがあったり、入浴シーンがあったりと、大人なシーンも満載。ロリフェイスなんだけど大人であるという薬師丸ひろ子の魅力をよく引き出している。深作監督、やるな。

「えっ、そこまで見せていいの!?」という驚きが満載

お話の方はというと、これはもういい意味でめちゃくちゃ。静姫が八剣士と共に館山城を取り戻すお話なのだけど、魔法っぽい特殊効果あり、モンスターありと、何でもありの超展開を繰り広げるのだ。もはや時代劇ではなく、「和風っぽい世界観の何か」なのだけど、この潔さが本作ではうまくハマっていて、次が何が飛び出してくるんだ!? とドキドキしながら画面に釘付けになってしまう。最近のお行儀の良い映画とは違って、「えっ、そこまで見せていいの!?」という驚きが満載なのだ。深作欣二という才能と、薬師丸ひろ子の魅力が奇跡のコラボレーションを果たした傑作といえるだろう。

子どもと大人の両方の魅力を備えた薬師丸ひろ子のロリフェイスを楽しみながら、随所に飛び出しまくる深作演出を楽しんでほしい。