アイスランドのグンナル・ブライエ・スヴェインソン外相が11月に来日し、日本記者クラブにて会見を開きました。

アイスランドのグンナル・ブライエ・スヴェインソン外相

第2外国語の履修において英語の次に日本語を選択する学生が多い

日本とアイスランドの関係について、スヴェインソン外相は、

『アイスランドは、日本と同じように海に囲まれた島国だ。日本という国や日本の文化に対して敬意と親近感を持っている。アイスランドの大学では、第2外国語の履修において英語の次に日本語を選択する学生が多く、日本のアニメ、漫画、映画なども若者の間で人気がある。

地理的には離れているが、グローバル化が進み距離は障害にならない時代に入った。日本との協力関係におけるポテンシャルは高い。

また、日本からの観光客も増加し、今や年間1万2500人もの日本人がアイスランドを訪れ、その数は2003年と比べると5倍に膨らんだ。ぜひ航空協定により直行便を就航させたい。貿易面においてもアイスランドにとって日本は、EU(欧州連合)、米国などに次いで第4位の貿易国相手国だ。アジアのなかでは2013年に中国とFTA(自由貿易協定)を締結したが、日本ともぜひ実現させたい。

あわせて日本には世界において第11位の経済圏であるEFTA(欧州自由貿易連合)にも加わってほしい』

と強調しました。

エネルギー生産量の82%以上が再生可能エネルギー

また、アイスランドは金融危機や欧州危機をいち早く脱することのできた国であるとし、その経緯についてスヴェインソン外相は、

『危機に直面した際に最初に手掛けたのは財政均衡だった。そして減税を刺激策として経済成長を促進し資本規制も緩和した。その結果、2014年は財政収支の黒字転換を見込む。そもそも通貨がユーロではなく独自の通貨・クローナであるため、輸出産業や国内の産業、農業、漁業への打撃が少なかった。今は実質経済成長率で見ても、2014年は2.9%、2015年は3.6%、2016年は2.8%と、欧米でも有数の経済成長率(見通し)となっている。2014年は失業率も4%、CPI(物価上昇率)も1.9%と堅調だ』

と述べました。

さらに、危機を脱したことの要因の一つに、エネルギー生産が自前である点も大きいとし、

『アイスランドは自前でエネルギーを供給できるため、他国と比べ、化石燃料の輸入に依存する必要がない。エネルギー生産量の82%以上が再生可能エネルギーであり、なかでも25%を地熱が占めている。今後もこの地熱発電には力を入れていきたい。

2050年までに脱・化石燃料を目指す方針だ。

実は、この地熱発電には日本製のタービンを活用している。同じ火山国ということもあり、地熱発電における日本とアイスランドとの関係は緊密だ。

今後は、ぜひとも日本と組んで地熱発電プロジェクトを東アフリカや東南アジアの国々で進めていきたい。この分野での日本との協力は、気候変動への対応策にもつながり、世界が抱える環境問題の解決にも結びつく。2016年は日本とアイスランドの国交が樹立して60周年になる。ぜひともさらなる協力関係を築いていきたい』

と、アイスランドから日本に対する要望についても述べました。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。