「日本史は分かりづらく、覚えにくい」。長い日本の受験の歴史の中で、恐らくほとんどの受験生がそう思ったに違いない。「だったら分かりやすく覚えやすい日本史の本を作ってみよう」。そんな発想のもと、かつてないユニークな日本史の教科書が完成した。タイトルは『京大芸人式日本史』。著者であるお笑いコンビ・ロザンの菅広文と、彼に協力した相方の宇治原史規に話を聞いた。

ロザンの菅広文(左)と宇治原史規

――そもそものきっかけは菅さんがセンター試験の日本史を受けて大惨敗したことから始まったそうですが、そこから本になるまではスムーズに進みましたか?

「けっこう時間はかかりましたね。まずは宇治原さんに日本史全体の流れを分かりやすく書いてもらって、それを一回、自分の頭に入れて分かりやすい形に変えてから書き始めたので、一年くらいはかかりました」

宇治原「最初は『そんなこと出来るのかな』って思いましたよ。他に無いじゃないですか、本の形式自体が。噛み砕いているどころか、違うものにしちゃっているし。でも、『日本史の教科書を物語のように読めば流れが頭に入って忘れない』と、僕が彼に言ったことがどうやって本になっていくのかは興味深かったです」

――執筆していく中で、最も難しかった部分はどこでしょう?

「とりあえず面白い本、笑える本にしたかったので、笑かし方がワンパターンにならないよう、漫才形式やコント形式など、いろいろなスタイルになるよう意識しました。そうすれば受験生が『あ、このパターンはあの時代だったっけ』と思い出すフックになるかなと」

宇治原「読み物として面白かったですよ、いろいろな形してんねんなと。『これ、確かクイズやってたとこやな』とか『漫才やってたとこやな』とか、覚えやすいですし」

「ほんまは1つのパターンに絞った方が読みやすいんですよ。でも、それよりも覚えやすい方を重視して、あえてひっかかりがあるスタイルにしたんです」

――本書では、日本史を語る上で菅さんが本の中で持ち出した「天皇」と「土地」という視点がとてもシンプルで面白かったです。

「受験に関係なく日本史を眺めたら、普通に面白かったんですよね。で、『これ何の話やろ?』と思った時、『土地の奪い合いしてるだけの話やな』と。そこから、どういう奪い合いで、誰が話の軸なのか考えたら『天皇』だと。長い歴史の中で、天皇を誰が守るんですかという話になり、『俺が守りたい』『いやいや俺が守りたい』ということをずっと繰り返してきた。その意味で日本の歴史は"建前"の歴史でもある。途中でそこに気づいたので、それまで書いていたものをすべて書き直しました」

――多くの人にとって、日本史は「面白くない」というイメージがあると思いますが、お二人にとって日本史の面白さはどこにあると思いますか。

「言うたら、大河ドラマってみんな面白く見るじゃないですか。結局、その拡大版だと思うんですよ。ですからほんまはもっと普通に面白いはずなんですよ」

宇治原「この本の発想の元にもなってますが、もともと全部つながっているものを授業や教科書では便宜上、区切るから分からなくなるので、区切らない方が本当はいいんですよね。たとえば昭和から平成に変わりましたけど、僕の中では特に区切ってないですし。自分の中でバツッと何か区切れてるわけでもありませんから」

「あ、それ書いたらよかったなぁ(笑)」

――全体を流れでとらえる"区切らない"覚え方は、日本史以外の科目にも応用出来るでしょうか?

宇治原「日本史の方がより分かりやすいでしょうけど、多少は出来ると思いますよ。数学とか」