剛腕で知られる石破茂・前自民党幹事長が、安倍改造内閣で地方創生大臣に就任した。石破氏は「日本が国家として引き続き繁栄していくために今までのやり方を根本的に改めなければならない」と強調した。石破氏の手腕に期待が集まる。

ただし、沈没していく地方経済を立て直すのは容易ではない。これまでは、公共投資を厚く配分することで、景気を改善すればよしとされてきた。ところが、公共投資を実施しても景気改善効果は一時的で、長期的な経済低落に歯止めをかけられないことがわかってきた。永続的に地方経済を活性化するには、これまでにない手法で新しいビジネスを創出していかなければならない。

就任会見で、石破大臣は、地方分権の推進と「国家戦略特区」の活用が鍵になると話した。確かに、地方にしかできない新しいビジネスを作っていくには、岩盤規制に切り込む「国家戦略特区」の活用がもっとも効果的だ。医療特区、農業特区、新技術開発特区など、アイディアはいくらでもある。

ところが、経済特区で新ビジネスを立ち上げるようとしても、前例のないことに対して監督官庁からさまざまな抵抗が予想される。石破氏には、関係官庁の縦割り行政の弊害を打破して、地方創生に必要な規制改革を実現する手腕が期待される。

ただ、地方で斬新なビジネスを創生するには、もう1つ壁がある。そもそも地方自治体から斬新なアイディアが出てきにくいことだ。ほとんどの地方自治体は、長年にわたり中央の指示通りに動くことに慣れきっている。政府が「国土強靭化」と言えば、それに該当する案件を見つけることに一生懸命になるだけである。中央官庁の不興をかうことを覚悟で、斬新な規制緩和を求めることはほとんどなかった。国の方針に逆らってでも先行して規制緩和を実施するのは、東京都や大阪府、および地方分権を志向する一部の自治体に限られる。

さらに、もう1つ、悩ましい問題がある。経済特区によるビジネス創生には、長い時間がかかり、短期的な景気引き上げには向いていないことだ。

来年4月に統一地方選を控え、「景気回復の実感を必ずや全国津々浦々に」と宣言している安倍首相にとって、地方創生は重要課題である。長期的な地方活性化も重要だが、統一地方選に向けて短期的な経済効果も問われることになる。目先「国土強靭化」と銘打った公共投資に地方創生を頼らざるを得ない可能性もある。

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執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。