9月3日に内閣改造が行われ、新たに発足した安倍内閣の最重要課題とも言える「地方創生」。その地方創生を担当する大臣に前・自民党幹事長の石破茂氏が就任することになり、「地方創生と経済の好循環」に対して大きな関心が集まっています。

そうしたなか8月27日、日本記者クラブにて、元・総務大臣、元・鳥取県知事で、現在は慶應義塾大学法学部教授の片山善博氏の会見が開かれました。

少子高齢化と人口減少化が進む日本において、「地方を創生させ、好循環の波を全国に広げていくためには、どのような政策や成長戦略が必要なのか」、片山氏が先鋭的かつ建設的な意見を述べました。

元・総務大臣、元・鳥取県知事の片山善博氏

地方自治体(鳥取県)の知事を務めた経験もある片山氏は、まず、

『今のように、政府や中央省庁が出す政策を、地方がそのまま受け取り進めていく体制は改めるべきである』

と、現在の地方行政の在り方そのものについて、改善点を指摘しました。

『これまで、地方自治体は自ら考えるということをせずに、政府や中央省庁が指示する政策にただ飛びつき、それについていけば良いという安易な考え方しか持っていなかった。

そもそも政府には地方を救う余裕などない。余裕もなく具体策もないなかで、公共事業費を地方にばらまいて、地方も忠実に公共事業を展開してきた。それでは地方創生も進むはずがない。そもそも地方には各々の特徴がある。政府の地方に対する政策は、公共事業によって地方経済を再生させ、雇用につなげるという一辺倒な発想にあるが、それはあまり意味のないことだ。

私が知事を務めた鳥取県を例に挙げれば、道路や橋を造るような公共事業を行うには、鉄やアスファルト関連の資材や、建設機材を県外から買う必要がある。国に例えるならばギリシアに似ており、輸出よりも圧倒的に輸入が多い自治体だ。買うものばかりが多くなってしまい、お金は外へ出ていき、結局、県内の労働賃金は安くなってしまう。

また、産業に必要な電力や化石燃料など、エネルギーも県外から買っているため、日常のエネルギーを維持するだけでも多額のお金が外に出ていく。政府の言う通りに公共事業を行っても、県内は活性化しないのだ。

そこで、私が知事を務めた頃には風力発電事業を始めた。

他県においても、従来型の公共事業だけではなく、地方のニーズに応じて、交付金を活用する計画性と柔軟性が求められる』

と、政府・中央省庁と地方自治体との関係性について、具体策を述べました。

また、地方議会の在り方について片山氏は、

『そもそも地方議会も地方議員も、地方経済を救うのは公共事業で良いのかということを吟味せず、予算も点検していない。世間では一時、号泣(地方)議員の登場と共に、政務活動費(政活費)の問題が取り沙汰されたが、政務活動費というのはたとえるならば、学校に通う子供たちが自由研究を行うための経費だ。実際に使っていれば問題のない経費であり、なぜか地方議員たちは、調査や研究をすることが本分だと思っている。

本来、議員の役目は合議制の決定機関である議会において、予算や政策を決定することにあり、決定の過程で徹底的に討論することにある。しかし、議員たちは自分たちが決めることや決めたことには関心がない。そういう環境にあっては当然、議会中に野次も飛び出す。地方議会において、野次は特異なものではなく、昔から存在するのだ。先日の、東京都議会のセクハラ野次問題を例に挙げれば、あれは一般質問の日であり、決定することと関係のない質問が長い間続き、16人が登壇していたなかで起こった。

16人が順番に議題とは関係のない質問を続けるなか、100人を超える議員たちは何もやることがなく、野次を投げかけることくらいしか仕事がなかった。あのような議会運営は間違っている。

本来ならば、米国の地方(州)議会のように、まず委員会で議案ごとに、役所や住民の意見をしっかり聞いた上で、議員が議会で議決するという体制が望ましいはずだ。

議会には住民も参加でき、議員が議題と関係のない質問をすることもない。そして、オープンである。

日本には公の場で議論せずに、根回しや人間関係で事を進めたがる慣例があるが、それはやめるべきだ』

と、地方議会の問題点と改善点を示しました。

そして、地方創生と経済の好循環については、

『コマツのように、東京ではなく、地方に拠点を移す企業がもっと増えるような環境作りが大切だ。これまでのように、官僚が腕まくりして国の関与のもとに、地方創生を進める政策はやめた方が良い。また、地方の優れたリーダーは、自身が目立つようなパフォーマンスで注目を集めるのではなく、政策で人を引きつけるよう努力を重ね、知恵をだしてほしい』

と、自身の経験から、地方創生に向けたメッセージを述べました。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。