積乱雲は局地的な大雨を降らす

近年、各地の豪雨に関する数々のニュースを見聞きした人も多いだろう。実は、暑い季節はこういった激しい雨が起きやすい時期だという。ライフビジネスウェザーの気象予報士に、豪雨の仕組みについて聞いてみた。

20分足らずでできた積乱雲が雨をもたらす

暑い季節は海水浴にバーベキューと、アウトドアで楽しむ機会も多いです。そういった時期の天気を左右するものをご存じでしょうか? それはもくもくした積乱雲です。今回は入道雲とも呼ばれるこの雲についてご紹介しましょう。

地面付近が強い日差しにより暖められると、空気が軽くなり上昇気流が起きます。上空にのぼった空気は、冷やされて小さな水や氷の粒となります。これらがたくさん集まったものが雲の正体なのです。

気温が上がる今の季節は、春や冬より上昇気流が強いので、ソフトクリームみたいな形の雲が発達しやすいのです。この雲は積乱雲(入道雲)といい、背が高いのが特徴。縦長の雲の最頂部は上空10kmを超えることもあります。積乱雲の中の上昇気流は、秒速10m(時速36km/時)以上の速さです。つまり、およそ20分もすれば10kmほどの身長の高い雲が発生して、一気に雨を降らせるのです。

縦に伸びた分、雲のかかるエリアはかなり狭くて降る雨は局地的です。天気予報は現象のエリアが広いほど精度が良く、高気圧・低気圧による雨や台風による雨は当たる確率が高いのです。一方で積乱雲のように、ある一定の場所だけに降る雨というのは予報しにくいという難点があります。

雷、竜巻、ひょうのでき方

落雷や竜巻、ひょうも同様に予報が困難です。

積乱雲の中にはたくさんの氷の粒が存在します。これが激しい上昇気流により、ぶつかりあって電気が発生すると雷になります。強い上昇気流により、積乱雲の中の渦が引き伸ばされて細くなり、回転が速まると竜巻になります。そして、雲の中の氷の粒が大きくなり、地上まで溶けずに降ってくるとひょうになるというわけです。いずれも積乱雲が引き起こす現象で、かなり局地的なためにやはり予報が難しいのです。

1時間に50ミリの雨は、50kgの人間と同じ重さ

午前中はおだやかな青空でも油断できません。午後から急に空が暗くなり、「ゴロゴロ」と雷の音がとどろいてきたら、すぐ近くに積乱雲が迫っているサインです。その直後、傘が役に立たないほどの激しい勢いで雨が降ってくるおそれがあります。

1時間に50ミリ以上という非常に激しい雨が降ると、下水が満杯になり、道路脇の側溝があふれたり、マンホールから水が噴き出したりといった現象が見られます。家の中にいても、排水溝やトイレの水が逆流することもあります。

ところで、1時間に50ミリの雨とは重さにするとどのぐらいになるのでしょうか。大人用の傘にこれだけの雨が降ると、50キロの人が乗っかってきたのと同じ重さになります。到底、傘をさしてなんていられませんよね? 最近はそれ以上の1時間に80ミリとか、100ミリを超える雨も観測され、雨の威力がすさまじくなっています。

天気の変化に敏感になろう!

元来、このような激しい雨は山で降るものとされてきました。山肌に沿って上昇気流が起き、雲が発生しやすいからです。ところが近年は、山沿いで起こる現象と同じことが都市部でも頻発するようになっています。ヒートアイランドによって暖まった空気は、軽くなり上昇気流が起こります。さらに、風がビルにぶつかることで上昇気流ができやすく、積乱雲が発達して身近な場所でもゲリラ豪雨が起きています。

土や森林があれば、スポンジ効果で雨を吸収してくれますが、アスファルトに覆われている所では、降った雨が地面にしみこまず、一気に道路が川のようになってしまいます。地下鉄や地下街に水が流れ込むことも。都市では、雨が降ってから浸水までの時間が極めて短いのです。

せっかちでパワフルな積乱雲から身を守るには、天気の変化に敏感になることがカギです。天気予報で「大気の状態が不安定になりそう」とか「雷を伴った雨にご注意を」と言っていたら、天気が急変すると思ってください。

5分、10分でさっきまでの状況とガラッと変わってしまうこともあります。屋外では、携帯電話などの天気サイトで雨雲レーダーを確認したり、あやしい雲がないか空を見上げたりしながら、空模様を気にして行動することが大切です。

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筆者プロフィール : ライフビジネスウェザー

ライフビジネスウェザーは、生活に密着した生活気象(ライフウェザー)と業務上役立つ産業気象(ビジネスウェザー)を応用し、市場のニーズに合わせて1kmメッシュという高解像度気象予測をコンテンツ化。提供する“しくみ”や表現方法までこだわり、実生活や業務で使えるツールを企画・開発・販売しており、建設現場・スポーツ施設・流通向けなど、さまざまな分野で活用されている。