8月6日、日本記者クラブで元・駐日米大使特別補佐官、現在はジョンズ・ホプキンス大学の教授であり、米ライシャワー東アジア研究センター所長のケント・E・カルダー氏による来日記者会見が開かれました。会見の中で「国際政治・経済都市として重要性が増すワシントンでは、中国、韓国に対抗するためにも日本の存在感を高める対応が必要になってきている」と強調したカルダー氏。その発言に込められた"今後の日本の在るべき姿"についてまとめました。

元・駐日米大使特別補佐官のケント・E・カルダー氏

『ワシントンは経済的にも政治的にも、交渉を行うのに最適な場所』

まず、カルダー氏の会見は、

『日本はグローバル政治都市であるワシントンの静かな変化に気づくべきである』

というメッセージから始まりました。

カルダー氏は、

『ワシントンは今や米国政府を超えて存在するようになってきている。

世界銀行やIMF(国際通貨基金)などの国際機関の本拠地がある他、世界的に有名な機関や活動的なNGOなどが存在するようになり、経済的にも政治的にも、交渉を行うのに最適な場所になってきている。世界銀行とIMFは共に19番ストリートにあり地下道で繋がっている。その他、連邦準備銀行、多国間投資保証機関、米州開発銀行など、経済的、知的資源がワシントンという小規模な地域に集積している。

このような集積に競争が加わることで、世界金融システムの安定化とグローバル展開につながる公共融資体制が整備されているのだ。それはもはや米国政府の範疇を超えているだろう。

また、ワシントンが影響力を持つのは、単に米国政府の権力がそこに存在するからというだけでなく、シンクタンクや半官の研究センター、多国間機関、個々の企業の研究者などが、戦略や経済に関する重要な情報を発信しているという点にある。インターネット時代において情報の重みは急速に増している』

と、情報発信の重要性について述べた上で、さらに、マスコミ開拓の意義についても強調しました。

『政治・経済や知識の分野でワシントンの価値を再認識すべき』

『中国も韓国も米国メディアを急速に利用し始めている。中国などはワシントンポストにチャイナデイリーの記事を掲載して情報発信し続け、スタッフとして、米国人のジャーナリストを多数採用している。

また、過去20年で中韓両国の米国における人口は、中国系米国人の人口が日系米国人の4倍、韓国系米国人が2倍にまで増加しているなか、中韓両国はその静かな人口の変化を上手に利用している。

残念ながら米国メディアの日本への関心は薄くなるばかりだ。領土問題に関しても一般的には理解されていない。

政府関係者による外交も、中国などは2週間近く滞在し各地を周遊して視察や交渉をするなか、日本の場合はピンポイントの訪米で、すぐに帰国することも多い。

ロビー活動も、現在は中国、韓国が積極的に行っており、 ワシントンでの中韓の発信力は高まっている。興味深いことに、北京とソウルの姉妹都市が"ワシントン"である一方、東京都の姉妹都市は"ニューヨーク"である。

日本はもっとワシントンにおける存在感を示すべきであろう。例えば、欧州各国は政府機関より弾力的に対応できる半官半民組織を活用している。それに比べ、近年、日本の第三セクターやシンクタンクが米国から撤退しているのは残念なことだ。日本はワシントンに対する古いイメージを捨て、ニューヨークに比べて政治・経済や知識の分野で地位が高まっているワシントンの価値を再認識すべきであろう』

と、経済政策や安全保障の面で、日本がワシントンを上手に活用し、世界に対して発信力を持つことの重要性を訴えました。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。