いい人が出てこない!? 自由すぎるキャラクターたち

三谷作品のもうひとつの魅力と言えば、登場人物たちが「勝手」なことだ。三谷作品には、いわゆる「いい人」はほとんど登場しない。ストーリーに「都合のいい」キャラクターも出てこない。一見「いい人」に見えるキャラクターでも、状況が変われば人柄も変わる。

それぞれが勝手に自分の人生を生きていて、どこかしら腹黒く、だからこそ憎めない男女ばかりが描き出されるのだ。そんな彼らが“ひょんなきっかけ”で事件に巻き込まれたことでつながっていく快感たるやいわずもがな。どのキャラクターに感情移入するかは観客の自由。一人ひとりの人生が混じり合うことなく、モザイクのように見事な人間模様を描き出すのが三谷作品だ。

たとえば、高級ホテルという“密室”を舞台に、大晦日の一日を描いた『THE 有頂天ホテル』。キャラクターの一人ひとりが自分の意志で動き、嫌な事はしない。だからこそたくさんのトラブルが次々と起きてしまうわけだが、ドタバタしているうちに最後にはなぜかすべてが丸く収まる奇跡が快感!

また、他の三谷作品に登場したキャラクターが、違う作品にも同じ役柄で登場していたりするのをご存知だろうか。『みんなのいえ』で夫婦を演じた八木亜希子とココリコ田中が、『THE 有頂天ホテル』のあるシーンに出ている。これはいわゆる“カメオ出演”といわれるものだが、『ステキな金縛り』にも、『ザ・マジックアワー』『THE 有頂天ホテル』にも、他の作品に登場する“あるキャラクター”が一瞬登場している。ぜひ探してみてほしい。

こんなふうに、それぞれの人生を生きるキャラクターたちだから、話す言葉も勝手そのもの(に見える)。とにかくしゃべり倒して、ボケて、ツッコみ、大いにボヤく。「清須会議」にも、戦国時代末期の物語であるにもかかわらず、まるでアドリブのようなセリフの応酬がいっぱい! 当時の言葉と現代語のツッコミをないまぜにしながら、人物たちの心情をうまく描き出しているのだ。

まるで宝探し。スターが意外な姿で登場 

そして、意外なスターがこれでもかと登場するのも、三谷作品の大きな見どころ。しかも、普段の美男美女のイメージとは全く違うメイクや衣装で出ていたりするから、エンディングクレジットを見て初めて、「あれ、この人出てたの?」ということもしばしばだ。

「清須会議」では時代劇ならではのメイクや衣装も、三谷のこだわりがたくさん! 織田の血筋は鼻が高かったという史実に基づいて、信長の子供たち3人を演じる役者陣は、特殊メイクで鼻を高くして撮影に挑んだそう。

また、他の時代劇よりも、ちょんまげの髪のない部分が多いのは、決してウケ狙いなわけではなく、実際に残っている肖像画をもとに再現したものなのだ。女優陣の変身ぶりにも注目を。秀吉の妻・寧を演じた中谷美紀は、ぶっとい眉毛で弾けたダンスを披露。剛力彩芽も地眉をほとんど塗りつぶし、お歯黒姿で松姫役に扮している。また、とことんおバカな信長の次男・信雄役も、よ~く見ないと妻夫木聡とわからないほどのできばえだ。

さて、いかがだっただろうか? そんな話題の三谷幸喜最新映画「清須会議」は、9月6日WOWOWシネマにて放送決定。その他の三谷幸喜の代表作も一挙にお届けする。なお、特設サイトコチラから。どの作品に、どのキャラクターが“カメオ出演”しているのかも再度確認してみてほしい。この秋、WOWOWで三谷ワールドをどっぷり楽しもう!

(文:まつざきみわこ)