寝ている間に熱中症にならないための工夫とは

まだまだ寝苦しい夜が続く8月のこの時期。熱帯夜の日も少なくないが、そんなときに気をつけたいのが睡眠時における熱中症だ。寝ている間は熱中症に対して無防備になってしまうため、予防策が肝心となってくる。そのための効果的な手段とは何なのか。熱中症に詳しい横浜国立大学教育人間科学部の田中英登教授に聞いた。

睡眠中の脱水状態を防ぐために

睡眠中に熱中症になる主な原因は脱水症状だ。人は寝ている間にもかなりの汗をかく。その汗によって体内の水分が失われてしまうことが、熱中症につながるというわけだ。そのため、「寝ている間にできるだけ汗をかかない」「適切な水分を補給する」ということが大切となってくる。

質の良い睡眠のため、エアコンをうまく使う

では、具体的にはどうしたらよいのだろうか。まず、発汗を抑えるためにエアコンや扇風機をうまく活用するのがよいと田中教授は指摘する。

「眠りに就く際に冷房を使わないと、夏場は質の良い深い眠りを得ることが難しくなります。気温が25℃以上の熱帯夜は、自動で切れるタイマー設定にせず、やや設定温度が高くてもいいので冷房をきちんとつけたまま寝るのがいいでしょう。また、扇風機の風も汗の蒸発を促すのでうまく活用しましょう」

寝る前のコップ1杯の水はOK、ビールはNG

次に水分補給。これは寝る前と起きた後がポイントとなってくるという。

「寝る前にコップ1杯の水を飲むということが、脱水を防ぐための知恵となります。また、睡眠中にふと目が覚めたときや完全に起床したときに、すぐに水分が摂(と)れるように枕元に冷えた状態の水などを置いておき、水分補給をしやすい状況を作っておきましょう」

実際、5℃から15℃の水分補給が熱中症予防によいというデータもある。保冷効果のある水筒を活用するなどして、枕元に置いておく飲料を5℃~15℃ぐらいに保っておけば、水分補給の「質」が高まることも期待できそうだ。

ちなみに、「ビールも水分だからいいだろう」と寝る前に「プシュッ」と開けてしまう人もいるかもしれないが、これは絶対にやめてもらいたい。ビールは脱水を促進し、利尿作用もあるためだ。個々人で、例えば「就寝3時間前はアルコールを控える」といったルール付けを徹底した方が無難だろう。

まだまだ寝苦しい夜は当分続くと見られるが、エアコンや扇風機の有効利用と賢い水分補給をセットで行うことで、睡眠時の熱中症リスクを低減するように努めよう。

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記事監修: 田中英登

横浜国立大学教育人間科学部の教授(保健体育講座)でもあり、医学博士でもある。主な研究課題は「運動時の体温調節機構に関する研究」「スポーツ活動時及び生活における熱中症予防」などで、セミナーや講演などで熱中症にまつわる正しい情報の発信にも努める。