京都のビジネスホテル事情は少々特殊だ。有名観光地ゆえ、ビジネスユースのみならず観光客や外国人客の割合は多く、全国チェーンのビジネスホテルも目立つ中にあって様々なコンセプト持たせた独立系ホテルや地元密着系のホテルも多い。そんなホテルが提供している「無料朝食」にはどんなものがあるのだろうか。

無料朝食とは言え、京都らしさを感じさせるメニューを展開している (写真は「四季倶楽部京都加茂川荘」)

なお、全国チェーンのビジネスホテルの無料朝食は、同一チェーンの店舗間で多少の差異は見られるが、全国的にほぼ同じクオリティー・内容となっている。そのため、ここでは各都市での独立系・小規模チェーンのビジネスホテルで無料朝食サービスを展開しているホテルに注目したい。もちろん「無料朝食」といっても宿泊料金に転嫁されているわけだが、別途料金が発生する「有料朝食」との対比で無料という表現を各ホテルが用いているので、本文でも便宜的に「無料朝食」と表現させてもらう。

京都では無料朝食は重要視されない!?

京都にある独立系・小規模チェーンを見てみると、和モダンのイメージを打ち出すホテルも目立つ。いわゆる町屋造りの小規模な純和風な旅館も1泊朝食付きプランで、積極的にビジネスユースの客を取り込もうとしているのだ。

ところが意外にも、宿泊者全員に無料朝食サービスを提供している施設は少ない。その理由として、ビジネスユースだけではなく、早い時間から観光スポットを巡るほか一般の飲食店を利用など食を重要視する観光客も多いため、ビジネスホテルも旅のスタイルに合わせて対応しているのだろう。

そう考えると、宿泊者全員に同一の無料朝食をサービス提供するホテル側のメリットは、京都では他県と比較して少ないのかもしれない。ホテルにとってはビジネスユースの割合が多ければ多いほど、無料朝食というサービスがリピーター獲得につながりやすいのだろう。

駅からちょっと歩いてでも利用したい朝食

そのような京都にあって、貴重な無料朝食サービスを提供するビジネスホテルの代表格に「京都プラザホテル」がある。京都駅の八条口は、新幹線の乗降にも便利で駅前には様々なホテルが立ち並ぶ。同ホテルは駅から徒歩で5分と少々離れた立地なのだが、「少し歩いてもこのホテルを選びたい」と思わせられる魅力的な無料朝食は武器になる。

朝食は6時30分から9時30分の間で提供。ソーセージにスクランブルエッグ、サラダ、ホットプレートで供される温かな焼きそばまである。冷ややっこがあるあたりに何となく京都を感じてしまう。ドリンクバーも無料、パンは2種類であるが、トースターは2台置かれており利用者目線を感じる。

「京都プラザホテル」の無料朝食。冷奴がある辺りに京都らしさを感じる

純和風中心のメニューを提供

堀川通りに面した二条城の近くに位置する「堀川イン」の無料朝食も魅力的である。河原町などの繁華街からは離れた立地だが、二条城からは徒歩5分。地下鉄駅へのアクセスも良く、京都駅前から頻発する市営バス停留所もホテルの前にある。

こちらの無料朝食サービスは6時40分から9時30分の間で提供。サラダをはじめ数種の漬物、切り干し大根、シンプルなタケノコの煮物など、作り手の顔が見えるようなメニューがうれしい。こちらもパンは2種類でトースターが2台置かれている。こちらのドリンクはポットに入れられたジュース、お茶、ミネラルウオーターサーバーが置かれている。

「堀川イン」の無料朝食。漬物や煮物などをちょっとずつよそってみた

旅館・ホテルチェーンが展開する和食膳

最後に京都ならではのビジネスユースにも利便性が高い旅館へ出向いてみた。旅館・ホテルチェーンの「四季倶楽部」は、利用されなくなった保養所などをリニューアルし、ホームページによると「オールシーズン1泊朝食付き5,000円(税別)」を打ち出しているとのこと。同社は主に温泉リゾート地へ展開しているが、「四季倶楽部京都加茂川荘」は珍しく都市部に立地する。外観やロビーを見るに高級旅館といった雰囲気のある施設である。地下鉄駅「北大路駅」からも至近というのもいい。

さすが旅館とあって朝食は和食膳で提供される。全12室の小規模な施設のためビュッフェスタイルではないが、食事処の大きくさられた窓からは庭園が望め、和食膳がその雰囲気にマッチする。焼き魚、温泉卵、納豆などといったシンプルなものだが、ご飯とみそ汁はお代わり自由となっており、ついついご飯が進んでしまう旅館の和朝食、ボリュームとしても満足である。

「四季倶楽部京都加茂川荘」の無料朝食。落ち着いた空間で楽しめるのもうれしい

※記事中の価格・情報は2014年7月取材時のもの

筆者プロフィール : 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)

ホテル評論家、オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場からホテルや旅館を評論。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践している。著書に『ホテルに騙されるな! プロが選ぶ絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」