話題の「つけナポリタン」とは如何なる麺なのか!? (写真は店舗「アドニス」より)

静岡のご当地グルメといえばB-1グランプリ優勝の「富士宮焼きそば」が絶対王者だ。しかしその富士宮市の下にある富士市でも、ユニークなメニューが登場して注目を集めている。その名も「つけナポリタン」。市内で50店舗を超える店が提供しているメニューだ。一体どんなメニューなのか、現地で調査してみた。

最初に断っておくが、このつけナポリタンは富士市で昔から親しまれてきたローカルフードではない。テレビの企画から生まれた新顔グルメだ。このあたりのいきさつを、仕掛け人のひとりである喫茶店「アドニス」のマスター、市川和典さんに聞いてみた。

富士宮焼きそばへの対抗心から

すると、「最初は、富士宮焼きそばへの対抗心からなんですよ」とサラッと裏話を披露。市川さんによると、今でこそ「富士宮焼そば」というメジャーブランドだが、「あの味は昔から富士市でも普通に食べられていたんです。それが富士宮焼きそばという名前で有名になってしまった。それに比べて富士市には、市の名前を冠した食べ物が何もないんです。それが悔しくてね」。

そんな折、地元商店街の役員をしていたこともあり、市川さんはとあるリサーチ会社から紹介を受けて、ご当地グルメを作ることになった。 そこにテレビ局が乗っかり、「新しい富士市グルメを対決スタイルで作ろう」という企画が持ち上がり、考案されたのが「つけナポリタン」だったというだけだ。

「うちは昔ながらの喫茶店なんですが、人気メニューはやっぱり昔からのナポリタンなんですよ。メニュー考案に協力してくれたのは東京の有名なつけ麺屋さん。いわば、ナポリタンとつけ麺のコラボなんです」。

試行錯誤を重ねて完成させたつけナポリタンは、地元の祭りを舞台にしたイベントでライバルである「富士味噌焼きそば」を投票で見事撃破し、「新・富士市グルメ」の称号を勝ち取った。

サクラエビが香る男メシ

そうしたいきさつで誕生したつけナポリタンだが、今では富士市の各地で独自解釈のつけナポリタンが誕生している。今回は、元祖であるアドニスの「つけナポリタン」(980円)を味わってみよう。

「お待たせしました」と出てきた「つけナポリタン」。まずビックリしたのはかなりのボリュームだということだ。それに、つけ麺屋とのコラボレーションということだけあり、スープが別添になっていて、そこに麺をつけて食すスタイルだ。麺はパスタと中華麺の粉を配合したオリジナルで、食べごたえ十分。トマトスープの酸味とコクが麺にからみ、ツルツルじゃなくワシワシ食べている感じである。

「アドニス」の「つけナポリタン」は980円

ほんのり香るサクラエビの芳香は、サクラエビを漬け込んだオリーブオイルが麺にからんでいるから。そこにレモンを加えてさっぱりと食するのもいい。メニュー名だけ聞くと女の子メニューのように感じるかもしれないが、いざ目にするとかなりの男メシなのである。「実際、女性のお客さまはハーフサイズを注文されることが多いんですよ」と市川さん。

つくねの串がぷかっと浮いた一品

すでに満腹のおなかを抱えながら、それでも次に向かったのは「串特急」の富士吉原店。ここは店名の示すとおり串焼きや串揚げのうまい居酒屋。ここで供されるつけナポリタンは、その名も「串特急風つけナポリタン」(850円)。

出てきたつけナポリタンの、スープにぷかっと浮いているのは手ごねつくね丸々1本。きのこたっぷりでさすが居酒屋メニュー。「ビール片手でもぜひどうぞ」とはスタッフの鈴木さんのコメントだ。

「串特急 富士吉原店」の「串特急風つけナポリタン」は850円

こってり系で麺も存在感大のガツガツメシ

最後にもう1軒だけ紹介したい。「Casual food bar Marble」の「つけナポリタン」は980円。マスターの石川明史さんいわく、「洋風ダシを長時間とってスープのコクを強めています。麺もオリジナル麺を開発したので歯ごたえがありますよ」とのこと。独自路線のつけナポリタンを打ち出したいという意気込みを感じさせる。

実際に食べてみると、若者向けと思われるインパクトの強いこってり風で、少しだけ和風の隠し味が感じられる。麺の存在感も強く、ガンガン食べられるのがポイントだ。

「Casual food bar Marble」の「つけナポリタン」は980円

●information
Casual food bar Marble
富士市吉原4-1-19

静岡県の新進気鋭のご当地グルメ「つけナポリタン」、新し物好きという人にはぜひチャレンジしてほしい。

※価格は全て税込。記事中の価格・情報は2014年4月取材時のもの