作家・伊坂幸太郎の50万部を超える人気小説『オー!ファーザー』が実写化され、24日から公開をスタートする。4人の親父を持つ高校生・由紀夫が、奇妙な同居生活を続ける4人の父親と共にある事件に巻き込まれていく物語で、主人公の由紀夫を岡田将生が演じ、4人の父親役は佐野史郎、河原雅彦、宮川大輔、村上淳。監督・脚本は、本作が長編映画デビューとなる藤井道人氏が務めた。

4人の父と"4股"の母という複雑な家庭環境で育った由紀夫。その事実を知りながらも変わらず彼にまとわりつく同級生・多恵子を、忽那汐里が演じた。2006年の「第11回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞し華々しく芸能界入り。翌年のTBS系ドラマ『3年B組金八先生』から女優としての人生がはじまり、オーストラリアから日本に移住した。

自身の父を「関係性が面白い」「変に真面目」などと紹介しつつも、その存在によって自身の未熟さにも気づいたという忽那。オーストラリアと日本、そして家庭で形成されていった彼女の人格は、やがては演技の面へと結びついていく。仕事からプライベートまで。目の前の忽那汐里は、何事も誠実に語り続けた。

忽那汐里
1992年12月22日生まれ。オーストラリア出身。2006年の「第11回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞。翌年、TBS系ドラマ『3年B組金八先生』の第8シリーズにレギュラー出演し、女優デビューを果たした。その後、日本テレビ系ドラマ『家政婦のミタ』(2011年)などで注目を浴び、2013年に映画『つやのよる』、『許されざる者』が公開され、第37回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞した。現在ドラマ「ビター・ブラッド」(フジテレビ系)に出演中。 撮影:荒金大介(Sketch)

――4人の父親がいる家族を見守る立場でもありました。撮影を終えて、あらためて感じるこの作品の魅力とは?

原作を読んでいなかったものですから、脚本を読んでもなかなかキャラクターが浮かび上がってこなくて。家庭内のシーンは違和感なく成立するのだろうかと考えたりしました。原作が伊坂ファンにもすごく思い入れのある方が多いみたいで、いろいろな印象を抱きながらご覧になると思うんですが、岡田さんと4人のお父さんのバランスがすてきというか。家の中の雰囲気も自然と役割分担ができていて、麻雀のシーンなんか新鮮なんですけど、いいなぁと思いますよね。

――男だらけの現場で(笑)。

そうですね(笑)。前にもそういう現場はあったんですけど年齢が近い方々との作品だったので、今回は自分にとって大先輩ばかりで。初日が家のシーンで、私が入った時点では雰囲気が出来上がっていたのですが、よそ者の私がお邪魔しても岡田さんの学校の友達が入ってくるみたいな感じで、皆さん温かく迎えてくださいました。最初のテストでも、いきなりアドリブが飛び交っててビックリしました(笑)。

――岡田さんとは2008年以来の共演ですね。

今まで全然すれ違うこともなくて。その間は出演作を拝見したりしてました。でも、岡田さんの印象は当時と全く変わりません(笑)。いい意味で、ずっとこうやって変わらない方なんだろうなと。たぶん、ほかの作品では撮影の合間もいろいろなことを考えていらっしゃって、今回は岡田さんのスタイルとしてあえてそういう面を出さないようになさってるんじゃないかと思いました。楽しくやることで、それが雰囲気につながる。そういう器用な印象は当時と変わりません。内には秘めていらっしゃるんだろうなぁ…とは思うんですけど。

――監督は27歳で、今回が初めての長編映画。忽那さんとの間には不思議な縁があるそうですね。

そうなんです。長編は初といってもインディーズではずっと撮り続けている方で、映画祭も出品していて賞も受賞されている方です。以前、『少女たちの羅針盤』(2011年)という作品が地方で撮影する機会があって、広島のダマー映画祭にゲストで呼んでいただいて。前乗り(前日入りのこと)して若い監督の方々と観光したんですよ。厳島神社に行ったり、ウナギを食べたり(笑)。その時に監督がいらっしゃって。

長編映画の脚本を書いているとおっしゃっていたんですが、それが『オー! ファーザー』。この作品のために相当、長い間準備をしたそうです。最初に今回のお話をいただいた時はその時の監督と気づかなくて、衣装合わせでお会いしたときに…ビックリしました(笑)。

――監督はこの脚本を大学生の時に書きはじめたわけですが、プロデューサーはその人柄に惚れて頼んだそうです。初対面の印象もやはりよかったのでしょうか。

監督もちょっと岡田さんに似ている気がして、すごく爽やかでちょっと内気そうで。喋り方も小声で、相づちも細かくしてくれるような感じなんですけど、お酒を飲んだ時に映画の話になると、熱意がすごいんです。